#シチュ:小毬と佐々美の部屋に鈴がやってきました。
――コンコン。
夜、私とさーちゃんでくつろいでいると、ノックが鳴りました。
「あら、お客さんですわ」
「ふえ? こんな時間に誰だろ?」
「はーい、どなた~?」
ガチャリ。
ドアを開けるとりんちゃんが立っていました。
「あれ、りんちゃん」
「こまりちゃん、こんな夜遅くにごめん」
「どうしたの?」
「実はな……」
困ったようなりんちゃんの顔。
「猫を拾ったんだ」
「どうしていいかわからなかったから、ここに連れてきてしまった」
ふえ?
ねこさんだったら、りんちゃんのほうが専門家さんだと思うけど…。
私が首を傾げていると。
「入れてもいいか?」
「あ、私は全然おっけーだよ~」
「さ~ちゃん、りんちゃんがねこさん連れてきたけど入れていい、だってー」
「あら、もちろんよろしいですわ」
奥からもウキウキしたような返事が返ってきました。
最近は、りんちゃんとさーちゃんがとっても仲良しさんでよく一緒に遊んでいるようです。
「そうか、よかった。ほら、入れ」
「みゃっ♪」
りんちゃんが手招きして入ってきたのは……。
「ふ、ふええええぇぇぇぇーーーっ!? り、りりりりりりりりっ!?」
あまりのことにはっきりと話せないーっ!
だって、だって……っ!
「なんですの、さっきから騒々しいで――――!?」
さーちゃんが部屋の奥から出てきたときでした。
「ふみゃ~~~んっ♪」
――がば~っ!!
「え、ちょっ……はぁ!? なななななななな、直枝さんっ!?」
さーちゃんの胸に嬉しそうに飛び込む理樹君!
「みゃぅ~ぺろっ♪」
「なっ、直枝さんが私にっ…わ、私のほほほほほほほほっぺたをををををを」
「こ、こらーっ理樹っ! ささみの顔なめなめしちゃ、めっだ!」
「ふみゅぅ…」
そうなのです!
理樹君が…理樹君がねこさんになってしまっていたのですっ!
「――つまり、どうして直枝さんが猫になったのかは全く分からないわけですわね?」
「そうだ、気付いたらこうなっていた」
「けど、なんで女の子の制服なの?」
「それはだな、しっぽまで生えてるからな」
「スカートの方がいいかと思ったんだ」
「殿方の制服ですと、オシリに穴を開けなきゃならないといけませんものね…」
――ベッドの上には私とさーちゃんにりんちゃんが座っています。
そしてねこさんになってしまった理樹ちゃんはというと…。
「にゃ♪ にゃ♪」
私たちの真ん中でうにゃうにゃしています。
「う~ん、どうしよっか?」
「そうですわね、戻し方がわからないことですし…猫と同じように遊んであげたほうが宜しいですわね」
「よし、それなら任せておけ」
腕まくりをするりんちゃん。
「理樹理樹ー、この指とまれ~」
りんちゃんが理樹ちゃんの前で指をプラプラ。
「みゃっ♪」
「みろっ、すごいジャレてきたぞっ」
両手でりんちゃんの指を捕まえようとパタパタしている理樹ちゃん!
かっ、かわいいよ~っ!
「理樹ちゃ~ん、こっちもほらほら~」
「ふみゃ♪」
私も指を出すと、それに顔をこすりつける理樹ちゃんっ!
「わたくしにもっ!」
「にゃんにゃん、理樹にゃ~ん、ちっちっちっち~」
「んみゃ~ん♪」
さーちゃんの指に自分の鼻の先っぽをくっつける理樹ちゃ~んっ!!
そして。
オシリをフリフリ~。
「「「きゃぁ~~んっ! かわいい~~~っ!」」」
もうねっ、もうねっ!
すんごくかわいいよ~~~っ!
「こっ、これは構わずにはいられなくなっちゃうねっ」
「いつもはあんなにも恥かしがって逃げ回っている直枝さんが、こんなにも甘えんぼさんになるだなんて信じられませんわっ」
そう言いながらさーちゃんが理樹ちゃんの頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めています。
しばらく頭を撫でたりしていたら。
「にゃんっ」
――くるりっ。
突然理樹ちゃんが仰向けになりました。
「にゃぅ~……」
鼻にかかった鳴き声。
うるうると潤んだ瞳が私たちに向けられています。
「ふえ? いきなり理樹ちゃん、どうしたんだろ?」
「こいつは…」
何かを考え込むようなりんちゃん。
「伝説のおねだりポーズだっ!」
「な、なんですのそれは?」
「つまりだな」
えっへんと胸を張る。
「もっともっといっぱい遊んで欲しいということを表しているんだ」
ほわぁあぁあぁ~っ!
あの…あの理樹ちゃんが!!
「みゃうぅ……」
仰向けに寝そべって、私たちにいじられるのを待ってるよ~っ!?
「みろ、この理樹の期待のこもった目をっ」
「みゅ~……」
すぼめた口から理樹ちゃんの甘い声が洩れる。
「たしかにわたくしたちがいぢってくれるのを、今か今かと待ちわびている目ですわね…」
「ちゃんと構ってあげないと理樹が可哀想だ…」
「そうだね」
「よぅし、なら今日は目一杯理樹ちゃんと遊んであげましょーっ!」
「「おーーーっ」」
「まずは、そうだな…」
りんちゃんが仰向けになっている理樹ちゃんの頭側に移動する。
「ねこなら、ここはどーなんだ?」
――こちょこちょこちょ~
理樹ちゃんのあごの下をまさぐる。
「うみゃん♪ うみゃん~♪」
「なんだ、そんなに気持ちいいのか。どーだどーだっ」
――こちょこちょこちょ~
「みゃうぅ~♪」
すんごい気持ち良さそうな顔で、りんちゃんの動きに身を任せている!
「おまえ、あごの下くちゃくちゃ弱いな」
「みゅ~♪」
「こら、そんな緩みきった顔するな」
「すんごい気持ちよさそうだね~」
「あたしはねこに関しては百戦れんまだからな」
「こまりちゃんは理樹のお腹を撫でてあげてくれ」
「わかったよ~、ではではっ」
――なでなで~、なでなで~。
「ふみゃぁぁぁ~~♪」
まるで温泉に浸かった時の様な幸せそうな理樹ちゃん。
「お腹も気持ちいいみたいだね~」
「よぅしっ」
――ちょん、つつつつ~~~。
理樹ちゃんのお腹に人差し指を乗せて、下になぞる。
「みゃみゃみゃみゃみゃぁ~ん♪」
指の動きに合わせて、私の指の感覚を楽しむかのように体をよじる。
本当に嬉しそうな顔なのですっ!
こんな顔されると、ついつい私にもイタズラ心が湧き上がってきちゃうよ~。
「これはどうかな~?」
――くにくに、くにくに~
人差し指をくねくねさせながら、理樹ちゃんのお腹に円を描いてみる。
「ふみゃん♪ ふみゃん♪ ふみゃぁん♪」
私の指の動きひとつひとつに敏感に反応を返してくれます!
こ、これはクセになっちゃいそうだよ~!
「ではわたくしは、直枝さんの足をお借りしますわ」
さーちゃんが理樹ちゃんの足の下に回りこんで、片足を持ち上げました。
「直枝さんの肉球~肉球~」
「にゃううんっ♪ にゃううんっ♪」
さーちゃんが理樹ちゃんの足の裏を人差し指でクリクリするたびに、理樹ちゃんが嬉しそうにパタパタと四肢を動かす。
「かっ…」
「かわいいですわぁぁぁーーっ!!」
「ほらほら、もっともっとクリクリクリ~♪」
「ぅにゃうぅぅ~♪」
うわ…さーちゃんもすんごい恍惚とした表情だよ…。
「よし、3人で同時に攻撃だっ」
「オッケー、だよ~」
「わかりましたわっ!」
「ふみゃ?」
「「「いっせーのーでっ」」」
…………。
……。
こうして私たちは、理樹ちゃんを文字通り『猫可愛がり』したのでした。