SSブログ TJ-Novelists

アニメやマンガ、ゲームから妄想したSS(ショートストーリー)を書き綴るブログです。

Traffic Jam Products

194.幼女、添い寝ス【幼女戦記】

※シチュ:作戦成功の帰り道、収容された友軍潜水艦にて。

 

軽い振動、続く重いものの落下音でグランツ少尉は目を覚ました。

うっすら開けた目に飛び込むのは、無機質なパイプが張り巡らされた鉄の天井。

ベッドの中にいるものの、圧迫感を覚える狭さと対流がない空気が感覚を襲う。

俺、潜水艦の中にいたんだっけ……。

敵司令部強襲作戦成功後、友軍潜水艦と合流、帰路の途中だった。

陸上生活に慣れた者にとっては狭い場所なのだが、2段ベッドを両サイドに設置可能な規模の大型潜水艦での迎えとは、破格の待遇だ。

体を起こし、音がした方――自分のベッドの下を見ると。

 

「……ぐぅ~~……あうぅぅ~……ぐ~……」

セレブリャコーフ少尉が落ちていた。

 

「おいおい……」

そう、落ちていたのだ。

ベッドから転げ落ち、通路のど真ん中で寝ている。

寝相悪すぎんだろ、これは。

呆れて溜息も出ない。

「……うぅん……ぐぅ……すぴー」

しかも「本当に女の子かよ」と思ってしまうような、無防備極まりない恰好で落ちているのだから困りものだ。

でけぇ……。

…………。

……。

じゃなくて! 目のやり場に困んな。

潜水艦という構造故男女同じ場所で寝るしかないのだが……さすがにこんな姿で通路に放っておくわけにはいくまい。

「すさまじい寝相だな…」と愚痴が零れながらも、気持ちよさそうに通路に寝転がっているセレブリャコーフ少尉を抱き上げた。

重っ!

ふわりとした柔らかさと温かさ、そしてズシリとした確かな重量感。

女の子を抱えたときは普通「…軽いな…」となるんじゃないのか……。育ち良すぎだろ……。

むっちむちだな。

そんなことを考えながらベッドに戻そうとした時だ。

 

「……――あ…れ?」

パチクリとつぶらな瞳を瞬いているセレブリャコーフ少尉と目が合った。

どうやら起こしてしまったようだ。

「 グランツ……少尉……?」

「ああ、悪い。起こしち――」

「え、私……え……? 抱きかかえられて…えっ? ええええええっ!? ひ、き、き、きゃ――」

待、これ、ヤバ――

 

「きぃぃゃぁあぁあぁあぁあぁぁああああああーーーっ!!!!」

 

***

 

「――で、だ」

 

絶叫で叩き起こされたせいで不機嫌を全身から発していたターニャ・デグレチャフ少佐だったが、話を聞くにつれて呆れを通り越して溜息しか口から出てこなかった。

姿勢を正し直立しているグランツ少尉の頬にははっきりと赤い手形がついていた。

対してセレブリャコーフ少尉は恥ずかしかったのか未だに顔を赤く染めている。

「グランツ少尉がセレブリャコーフ少尉の寝姿に欲情したわけではなく、通路に落ちていたセレブリャコーフ少尉をベッドに戻そうとしただけと?」

「ハッ! 寝相がとんでもなく悪く、下に落ちていましたのでベッドに戻そうとしました。全く、これっぽっちも、一切、欲情する要素はありません!」

それを断言してしまうのもどうかと思うのだが。

「私、昔から寝相はとても悪くて……。先ほどは目が覚めたらいきなり目の前にグランツ少尉の顔があって、びっくりしてしまって……それで……本当にごめんなさいっ!!」

ヴァイス中尉他2名はこの深夜の事件に「当面の間、酒の肴には事欠きませんな」と笑いをもらしている。

「グランツ少尉も善意でしたことだ。セレブリャコーフ少尉、許してやれ。グランツ少尉も頬に一発もらった件は許してやってくれ」

敬礼を見せる二人に「まったく…」と再三のため息が零れてしまう。

「とまれ、何事もなかったことはよかった」

万が一自分の部隊に不埒な輩がいたならば軍法会議にかける前に私の手で制裁を加えていたことであろう。

「――夜も遅い。早く寝て疲れを取ることも兵士としての務めだが……」

如何に信頼できる部下であるからと言って、万が一間違いがないとも言い切れない。

「やはり男共の中でセレブリャコーフ少尉だけ寝かしておくのもよくはないな」

「でしたら……どうしたらよいのでしょう?」

困ったように声を上げるセレブリャコーフ少尉だが、さてどうしようか。

「そうだな……私の部屋に入れるという手もあるが――」

すかさず生真面目なヴァイス中尉が、それは、と口をはさんだ。

「わかっている。友軍潜水艦の特別待遇の部屋に下位士官を入れるのも規律的にうるさそうだ」

考えを巡らせたが、一つ問題が起こらない方法に行き当たった。

最もコストも少なく最も確実性が高い方法だ。

「となれば、お前たちの部屋で、私が寝る他あるまい」

「「「「なっ!?」」」」

男連中に戦慄が走った。万が一何かがあった場合、確実に死を迎えるという恐怖だ。

「さすがに私がいる中でおかしなことを考える馬鹿者もいるまい。セレブリャコーフ少尉ではなく無論私に対していたずらをしようとしてもいいぞ。死より苦しい私刑は約束しよう」

「はっはっは、命が12個あったとしても挑戦したくはないものですな」

笑い飛ばすヴァイス中尉が「小官は床で寝ます故、少佐は私が使っていたベッドでお休みください」と床で寝ようとしたが、

「それも悪くはないが、今日は作戦成功のめでたい日だ。貴官は私が功労者を床に寝せるような薄情な上官だと思っているのか? ベッドで寝てくれ。私は――」

私も今や女性という性別だ。

セレブリャコーフ少尉も同性と一緒ならば多少は安心してゆっくり寝れるというものだろう。

前世とでも言えば良いのか、男という立場からすると気乗りしないといえばしないが、これまでも作戦時に一緒になることは少なくなかった。

最近では抵抗もそれほど感じなくなってはいた。

「この通りコンパクトサイズだからな。気乗りはしないがセレブリャコーフ少尉のベッドに一緒に収まるとしよう」

 

***

 

「デグレチャフ少佐! どうぞお入りください!」

……セレブリャコーフ少尉が毛布をめくって私が入ってくるのをいまかいまかと待っていた。

私にキラキラとした星を飛ばしてるかのような期待に満ち溢れた瞳が向けられている。

なんかこういうのって楽しいですよね、という言葉は無視だ。

「邪魔するぞ」

部屋から枕持参で少尉の横へと入り込む。

少尉が横にいるときの香り、というのを時折感じたりするが、ベッドに入ると――その香りに体が包まれていた。

落ち着く香りとでもいうのだろうか。

「さすがにこのスペースに二人はきつかったな……」

「そうですか? 寝れない、というほどでもないかと」

ほとんどくっつきそう、といった距離感だ。

……横を見ると少尉のあどけない顔が近くにある。

壁側を向いてほしいものなのだが。

「――デグレチャフ少佐」

くりっとした瞳が向けられていた。

「……なんだ?」

「髪の毛、触ってもよろしいでしょうか?」

「髪? まあ……かまわないが」

伸ばされた手が私の髪を優しく撫でる。

触られるときにどうしてもビクっとしてしまう。

その手がどうにも、くすぐったいのだ。

「少佐の髪ってふわっとしてて天使みたいですね」

「……そのせいで白銀とかいう大層な二つ名がついてしまったがな。――少尉の髪も触ってみていいか?」

「はい、いくらでも」

――さわさわさわさわ~

「ひゃぅっ、くすぐったいです~っ」

「お返しだ」

「――あれ?」

「……どうかしたのか?」

えっと、と言いながら少尉が顔を私の体に寄せてきた。

「くんかくんか」

「なっ!? こ、こらっ! か、嗅ぐなっ」

「少佐、石鹸変えましたか?」

「……ああ、支給品が変わってな。もういいだろう? 顔を離してくれないか」

自分の胸元に女性の顔があるというのも精神衛生上大変よろしくない。

「え? えへへ……いい匂いだなって」

 

――ごそごそ

――ごそごぞ、くいっ。

 

「――ゃ!? 少尉、あ、脚を絡めてくるなっ!」

「冷え性で温かいものがあるとつい……」

「つい、で絡めないでほしいものだな……ひぃゃ!? 足をくっつけてくるな! ――少尉の足、本当に冷たいな」

「床が鉄とかだともうつらくて……。少佐はどうです?」

「私か? 冷えは感じたことがないな。こんな感じだが……存外難しいな」

 

――くにくに、もぞもぞ、もぞもぞ、ぴとっ

 

「わっ、くす、くすぐったいですっ。…ぽかぽかですね。少しだけ暖を取らせてもらいますね」

「筋肉量の違いかもしれんな。――絡めすぎだっ! このっ」

「蹴らないでくださいっ。……ではこちらの反撃ですっ」

「体を挟むなっ! まったく器用な脚だな。ああもう、毛布がぐちゃぐちゃだ。かけなおすぞ」

「はーい」

 

***

 

>>同・二段ベッド左上部<<

 

一方その頃!!

グランツ少尉は悶絶していた!

 

『……髪の毛、触ってもよろしいでしょうか……』

『……かまわないが……』

『……少佐の髪って……』

『……っ……ゃぅっ……』

『……ふわっとしてて……』

『……んっ……っぁ……』

『……天使みたいですね……』

 

ぐぬぬぬぬ…………!

『……くんかくんか……』

『……こらっ……くっ……か、嗅ぐな……っ』

ふぬぬぬぬぬ…………!!

 

『……脚を絡めてくるなっ……』

『……くすぐったいですっ……』

『……絡めすぎだっ……そこはやめっ……っ……』

『……こっちだって……』

――キャッキャウフフ、キャッキャウフフ

 

うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!

真下でいったい何が行われているんだぁぁぁっ!!

グランツ少尉はエビぞりでのけぞっていた!!

 

むっちゃ見たい!!

 

『……体を脚で……このっ……』

『……そこはダメです少佐っ、ふふっ……』

 

うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

少佐の体を脚で!? 脚でどうするの!?

そこって!? そこってどこなんだ!?

いったいどんなことをしているんだぁぁぁっ!!

見てぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!

けど覗いたら……。

 

『死』!!

 

 間違いなく死ぬ!

下手をしたら……いや、しなくても潜水艦もろとも轟沈する!!

 

「ね……眠れんっ!!」

グランツ少尉は必死に精神攻撃と戦い続けていた!!

 

***

 

――ドン!!

 

突然の衝撃と共にデグレチャフ少佐の体が通路へと転がり落ちた。

敵襲か!?

一瞬身構えたが違うらしい。

先ほどまで寝ていたベッドを見ると……

 

「……ぐぅぅ~~すぴ~~~……」

 

セレブリャコーフ少尉がそれはそれは気持ちよさそうに寝ていた。

しかも縦であるはずのベッドに横向きになっている。

「……」

私はどうやら蹴り落されたらしい。

正直嫁入り前の娘の恰好ではないな。断じてない。

……。

寝相の悪さは知っていたつもりなんだがな。

普段はキャンプや床でスペースはもっとあったから気にしなかっただけか……。

「まったく……上官を蹴落とすとは肝が据わった奴だな……」

さっき「男と同部屋だと寝れなくなるかもしれん」なんて気にしたが、どうやら杞憂にすぎなかったらしい。

セレブリャコーフ少尉の位置を戻して、こちらもまたベッドへと戻った。

だが少しの時間をおいて。

 

――ドン!!

 

また転がり落ちた。

「………………」

今度はヘッドバッドで私はベッド外へと転がり落されたようだ。

その証拠に私の腹の上に少尉の後頭部が乗っかっている。

 

「……ぐぅぅ~~すぴ~~~……」

 

本人だけスヤスヤと気持ちよさそうに眠っているのがまた腹立たしい。

自分の部屋に戻ろうかとも思ったが、一度宣言した意見と行動を変えるのも上司としての資質を疑われる行為には違いない。

「やれやれ……」

ぼやきながらもセレブリャコーフ少尉の位置を再度直し、ベッドへと戻ったのだった。

 

***

 

>>同・二段ベッド右上部<<

 

一方その頃!!

ヴァイス中尉は悶絶していた!

 

――ドン!

『っ!?』

――ゴロゴロ、びたんっ。

……。

……。

『……ぅぅ……』

――のそのそ。

『……上官を蹴落とすとは肝が据わった奴だな……』

『お、おもい……っ。何を食べてこんなにむっちり育っているのだ……』

『……ああ、イモか……』

『……毛布をしっかり掛けておけ。風邪をひかれては困るからな……まったく……』

 

…………

……

 

――ドン!

『ぅっ!?』

――ゴロゴロ、びたんっ。

……。

……。

『……ぅぅ……』

――のそのそ。

『……頭突きか……』

『……やれやれ……』

『……頭をぶつけても知らんぞ……おも……っ……』

『……毛布……増やしておくか……』

 

ぐぅぅぅぅぅぬぅぅぅぅぅっ!!!!

デグレチャフ少佐、何卒、何卒頑張ってくださいッッッ!!

ああッ!!

デグレチャフ少佐の、デグレチャフ少佐の手助けをしたい!!

今すぐにでもここから飛び降りてあの小さな体の手助けをしたい!!

だがそれは不可能ッ!!

今のこの状況を見ていたことを知っていたら……否!!

聞いていたことを知っていたら……否!!

記憶に留めていたと知ったらデグレチャフ少佐は間違いなくお怒りになる!!

もしくは若干拗ねる!!

デグレチャフ少佐、小官は力にはなれませんが応援しております!!

心の中で!!

 

――ドン!

『うっ』

――ゴロゴロ、びたんっ。

 

…………。

……。

 

 

「ね……眠れぬッッ!!」

ヴァイス中尉は必死に精神攻撃と戦い続けていた!!

 

***

 

で、今回のオチというか後日談。

「あの……デグレチャフ少佐」

「なんだセレブリャコーフ少尉?」

「なんか……」

「どうした?」

「グランツ少尉が朝から『百合っていい……』とボソボソ言ってるのですがどうしたのでしょうか?」

「大方、園芸にでも目覚めたのだろう」

「あ、なるほど! 戦火で焼けてしまった野山に百合を植えようとしているのですね! お花が好きだなんて心が綺麗な人なのでしょうねっ」

 

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■おまけ・没案

 

「デグレチャフ少佐! どうぞお入りください!」

……セレブリャコーフ少尉が毛布をめくって私が入ってくるのを待っていた。

私にキラキラとした星を飛ばしてるかのような期待に満ち溢れた瞳が向けられている。

「お、お邪魔する」

少尉が横にいるときの香り、というのを時折感じたりするが、ベッドに入ると――その香りに体が包まれていた。

落ち着く香りとでもいうのだろうか。

「あ、少佐、そんなに横にいると落ちてしまいますよ?」

「む?」

「もっとこちらへ来ないと――よいしょっと」

お腹に回された腕でグイと体を引き寄せられる。

「はい、毛布を掛けましょうね」

「うむ」

肩まで毛布が掛けられた。温かい。

柔らかな温かさと匂いに包まれるかのようだ。

「寒くないですか?」

「いや、いい感じだ…」

「では、今日はもう寝ましょうね」

「うむ」

安心させるかのように、寝かしつけるように、私の胸の上にトントンとリズミカルに手の平を乗せるセレブリャコーフ少尉。

「~♪ ~♪」

鼻歌の子守歌付きだ。まぶたが重くなって……

………………

…………

……

「って、私は子どもか!!」

完全に子ども扱いされていたぞ、今!!

「きゃっ!? こうしないとって、なんとなく思ってしまい……」

どうやらセレブリャコーフ少尉の眠れる母性本能を刺激してしまったらしい。

「はぁ……いいから寝てくれ」

「は、はい!」

…………。

……。

 

 

193. 幼女、シャワーで焦る【幼女戦記】

※キャラも文も崩壊気味ですが何卒ご了承くださいmm

 

***

 

「この国には労働基準法も三六協定も児童福祉法もないのか……」

深夜の帝国軍参謀本部外局。

ターニャ・デグレチャフ少佐は報告用の書類を書き上げると、愚痴りながらその小さな体をデスクから起こした。

すっかりと肩も体も凝ってしまっている。

こんなにも凝りやすいのは、まだ筋肉も未発達な体ゆえか。

シャワーに入って肩を回せばすぐに回復するのもまたこの体ゆえか。

皮肉だ、と思いつつターニャは司令部に設置されているシャワールームへと向かった。

 

***

 

同・シャワールーム

 

シャワールームと言っても、現代日本のような設備があるわけではない。

コンクリート剥き出しである床と壁。

その壁に、つけてやったと言わんばかりに無造作にシャワーがついている。

シャワーとシャワーの間には簡単な衝立はあるが、体を隠すという目的よりは横に飛沫が散らない程度に緩和する簡素なものだ。

もちろん衝立だけでカーテンもないので横に人がいてもほとんど丸見えだ。

あってもなくても変わらんぞ。

どうなっているのだ、ここのプライバシー管理は。

そうは言っても参謀本部に女性将校はほとんどいない。

よって女性用シャワールームはいつもターニャしかいないのが実情だ。

「たまには湯船につかりたいものだな」

かつてはカラスの行水程度だったが、なければないで求めてしまうものだ。

「ふぅ……」

熱いシャワーの水滴ががターニャの幼い体にあたり弾ける。

それにしても……。

自分の柔らかい体を見やる。

生前とでもいえばよいのだろうか。少なからずとも女性の体は気になったものだ。

自分の胸を手で撫でるが、全くの大平原が広がっている。

男と変わらないといった印象しか持たない。

それはそれでよいのだが、やはり気になることはある。

「なぜセレブリャコーフ少尉はあんなにも大きいのだ…?」

胸のサイズには興味はない。

だがこうも差があると気になるものだ。

成長したとしてああも大きくなるものだろうか。

遺伝要因と食べ物だろうか。

この戦時下で食べ物の差もないとは思うが……。

ならば何らかのマッサージでもしているのだろうか。

自分の胸を揉んでみるが、そもそも揉めるほど胸がない。

「ふむ……」

胸を張ると寄せる肉もなくどうにもならないので、しゃがんだ姿勢になってみた。

――もみもみもみもみ

――ぐりんぐりんぷにぷにぷに

「ほう、こんな感じか?」

――もみゅっ、もみゅっ、もみゅっ

揉みしだく、といった揉み方をしてみた。

「……ん……」

自分の体とはいえイケナイ気分にもなってくるな、これは。

 

――ガチャリ。

 

突然のノックとともにシャワールームの扉が開いた。

「セレブリャコーフ少尉入室いたします! デグレチャフ少佐もご休憩で――――…………」

タオルを巻いたヴィクトリーヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉と目が合った。

そういえばまだセレブリャコーフ少尉が残っていたのだったな。

なぜかその少尉はこちらを見たまま固まっている。

「……」

「……」

「……」

「……」

ん?

……何かおかしい。

雰囲気がおかしい。

セレブリャコーフ少尉は瞬き一つせずこちらを見ている。

その顔がなんか赤くなっている気がしなくもない。

……いや。

待て。

待て待て待て。客観的に状況整理だ。

 

私が。

裸で。

しゃがみ込んで。

胸をもんで。

声を漏らしている。

 

……………………。

…………そんな様子を見たら人はどう思うだろうか。

…………まさか。

ま……。

まずいっ!!

大いに!!

大いにマズイッッ!!

「セっ、セレ――」

声をかけようとした時だった。

 

セレブリャコーフ少尉の顔がプシューっと音を立てたかのように真っ赤に染まった!!

 

「わわわわわわわたし、じゃなかった、しょしょしょ小官は、そのっ、んなっ、なっ、何も見てませんっ全然見てませんからっっっ!!!」

やはり絶賛勘違いしているではないかぁぁぁぁっ!!

「見てないです見てないですホント見てないですぅぅぅーーーっ!!」

顔を手で覆って入口へ駆けだそうとする少尉!

「ああああああっ、ま、待てっ!! とっ、止まれ!!」

「へっ!? あっ、あの、えとえとえとえとっ!!」

待てで止まってくれた少尉だが、真っ赤になった顔をそらしながら手をバッタバタさせて大混乱中だ!

「あのっ、そっ、そういうことはですね!」

目まぐるしく目が泳いでいるっ!!

「しょ、少佐も思春期に入るころですし、べっ、べっ、別におかしなことじゃなくてっ」

早くこの誤解を解かねばっっっ!!!

「少尉、きい――」

「そういうことは至って普通でありますぅぅ!!」

顔を真っ赤にしながら目を全力で閉じた謎の敬礼だ!!

「だから少尉っ、き、聞いてくれっ!」

「あのっ、けれどっ、できれば、おっ、お部屋でなさったほうが良いかとっっ!!」

私まで顔が熱くなるようなことをいうなぁぁぁっっっ!!

「ああああっ、傾注ッッッ!!」

「ッ……は、はいっ!」

さすが将校か。平時の号令でぴたりと止まった。

落ち着け。

落ち着け私。

状況をありのまま話すのだ。それですべて解決だ。

 

「貴官の胸を思い出して、ついな」

 

「……」

「……」

「……」

「……え?」

 

……ありのまま話したのだ。

……ただ、そのありのままがイケナイ発言にしか聞こえなかっただけだ。

 

「ふぅぅぅええええええええぇぇぇぇぇーーーっっっ!?」

全身桜色で湯気をあげて少尉が飛び上がった!!

あああああっ!! 自分の迂闊な口を打ち抜きたいっっっ!!

「わわわわわ、私のことを、その、そのその、おっ、想いながらだったのですかっっっ!?」

「だあああああああぁぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」

頭を抱えて悶絶するほかない!!

「しょっ、少佐は、そのっ、そ、そちらのご趣味がっっっ!?」

「ご、誤解なのだっ!! 私はっ!」

少尉の目を見て真っすぐに言い放った。

「貴官の胸が気になったのだっ!!」

「やっぱりそうじゃないですかぁぁぁーーーっ!!」

泥沼ぁぁぁぁーーーっ!!

「わ、わたしのその、お、お胸が、す、好きなのでありますかっ!?」

ササッと両腕で胸を隠す少尉!

「そうではなくてだなっ!!」

「わわわわわたし、男の人とも手をつないだこともなくて、そ、それが、その、ふえっ、ふえええええええぇぇぇぇーーーっ!?」

全く聞く耳をもってくれない!!

顔を真っ赤にしながらイヤイヤするばかりだっ!!

「わっ、わっ、私たち女性同士といいますかそのえとあのっ!!」

「だから誤解――」

「しょっ、少佐がおっしゃるならっ!! ちょっとがんばろうかなって><」

「何を!?」

既にセレブリャコーフ少尉の頭の中では百合が咲き乱れる展開が広がっているようだ!!

「うううう、けどっけどっ、やっぱりそういうのっ――」

少尉が両手で真っ赤になった顔を覆った。

「まだ早いですぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーっ!!」

 

――ズダダダダダダダダダダダダダーーーッ!!

 

そう叫ぶと少尉は入口に踵を返すと駆け出した!!

「まて、少尉、まってくれ!! 頼むから……待ってくれ…………」

言葉虚しく、全力で駆け出して行ってしまった。

 

「というか少尉……タオル一枚だぞ……」

静まり返ったシャワールームにつぶやいた一言がしみこんでいった。

 

***

 

今回のオチというか後日談。

翌日の参謀本部。

「あはは、サイズのお話だったのですね。私てっきり……」

なんとかセレブリャコーフ少尉の誤解を解くことに成功した。

はぁぁぁ……。

一時はどうなることかと思ったが。

ちなみにセレブリャコーフ少尉がタオル一枚で廊下を走り回った件だが、深夜だったおかげでレルゲン中佐のみが目撃、卒倒した以外の被害はない。

お嫁にいけない、と泣きわめく少尉を慰めるのも大変だったが。

「失礼ですが、発言よろしいでしょうか!!」

珍しいことに大隊中隊長であるマテウス・ヨハン・ヴァイス中尉が話しかけてきた。

「許可する」

「ハッ!」

生真面目な顔が余計に使命感を帯びた表情へと変わる。

「気にする必要はございません!! 胸などただの飾りかと! 少佐にはそれがわから――グホォッ!?」

とりあえず全力でぶん殴っておいた。