#シチュ:定期的に開催されるようになった女性陣の女性陣による女性陣のための『パジャマパーティ』。今日もいつも通り終わるはずだったのに…。
いつものようにクドの部屋でパジャマパーティが開催されている。
「あ、佳奈多さん。トッポを取ってください」
「ベッドの上で食べちゃダメよ。下りてきなさい」
「はーい、なのです」
「あはははははー、ミニ子怒られてやんのーっ」
「葉留佳は転げ回らないで」
「……三枝さん、下着が見えてます」
「いいじゃんいいじゃん別にー! 女の子しかいないしー」
「あの…僕、とりあえず男……」
「はっはっは、いいじゃないかいいじゃないか」
「くるがやもあぐらかくなっ」
「あの…僕、とりあえず男なんだけど……」
「なに、今日は無礼講といこうじゃないか」
「ふえ~いま何時ー?」
「ん、まだ0時ちょっとすぎだな」
「……う……」
ぼ、僕、絶対に場違いだ…。
これでも…これでも男なんだけど。
みんなはというと、女子ばかりという安心感かすっかり居住まいを崩しまくっている。
ベッドの上には制服のブレザーが無造作に放られているし、無用心に座ってるから目のやり場に困る。
女子高の修学旅行を見ているかのようだ。
それにどうにもさっきから妙に体がポカポカしている。
なんだろう?
他のみんなもそうみたいだ。
「来ヶ谷さん、僕にもジュース取ってくれないかな?」
「もうコップに注ぐのは面倒だから缶のまま飲んでくれ。ほら」
「うん、ありがと」
手に取った缶を何気に見る。
「スクリュードラ………………ええええっ!?」
「どうしたのよ、直枝?」
「コレ、お酒じゃない!?」
「違うぞ理樹」
鈴がえっへんと胸を張る。
「幸せになれるジュースだ」
「え、ええええーっ!?」
「ゴクゴクゴク…ぷはっ! なんか幸せさん気分だよ~」
「私もとても、はぴーはぴーな気分なのです~」
「……二木さん、マドラーです」
「ありがと。なかなか美味しく出来たわ、これ」
「どれ、私にも飲ませてくれ。して佳奈多君が口をつけたところはどこだ?」
「いやいやいやいや、ダメだからーっ!」
今さらだけど、みんなの顔が火照っていることに気付いた!
「やかましい理樹ちゃんですネ」
「んで、理樹ちゃんってどれくらい女の子に興味あるの?」
相変わらず脈絡のない葉留佳さんの質問が来た!
「……三枝さんの割には良い質問ですね」
「でしょ、でしょ」
「うむ、そこは気になるポイントだな」
「そこんとこどうなんだ、理樹?」
「そうね、私もとても気になるわ」
佳奈多さんたちがグイと僕に顔を近づけてくる。
「あ、いや……」
ここは逃げるのが得策のようだ。
「あ! 僕、ちょっと体調が……今日はもう帰るね」
立とうとした瞬間のことだった!
「葉留佳!」
佳奈多さんが目で合図!
「はいよっ!」
飛び上がりドアの前に立ちふさがる葉留佳さん!
「え!?」
「来ヶ谷さん、直枝を座らせて!」
「うむ」
肩を押さえつけられる!
「クドリャフカ、ロープ! 二番目の戸棚! 棗さんはベッドの上の片付け!」
「了解ですっ」「わかった!」
「神北さんは足を押さえて!」
「わかったよー」
「はい、ロープですっ!」
「直枝の足を縛りなさい」
「ええええええええええええええええええぇぇぇぇーーーっ!?」
瞬く間に足を縛られたっ!
「写真!」
「……はい、パシャリ」
佳奈多さんが手を上げた瞬間、西園さんのフラッシュが光る!
すごい統率力だ!
じゃなくてっ!
「ちょっと待ってよっ!?」
「待たない」
「後は来ヶ谷さん、ベッドまで運んで」
「了解だ」
「いやいやいや!?」
「お姫様だっこだぞ?」
「拉致でしょ、これーっ!」
反抗むなしく、ベッドに放り出された。
「な、なにするつもりなのさっ!」
足は縛られて動けないから上体だけを起こす。
「何って……抜かったわね」
「逃がさないようにすることだけしか考えてなかったわ」
「ふむ…ならばとりあえず理樹君を押さえ込んでおくか」
「え?」
「「「「「「賛成ーっ」」」」」」
酔っ払いたちが一斉に腕を高らかと突き上げる!
「いやいや!?」
「私は腕を押さえるわ」
「んじゃ私もーっ! 私左手がいいー」
「なら私は右ね」
ぎゅぎゅ~っ
「「んん~~~っ」」
「ひゃぁぁぁぁーーーっ!?」
ギュ~っと姉妹に両腕を抱きかかえられ、完全に自由を奪われたっ!
両腕に二人の体温が伝わる。
そしてかすかにお酒の匂いがっ。
「理樹ちゃんを完全確保だね~」
「いたずらしほうだいなのですっ」
「それ笑顔で言うことじゃないからねっ!?」
「何しよっか?」
「んー、理樹で遊ぶのは初めてだからな」
まったく聞いてくれてない!
「ちょっとちょっとみんな理樹ちゃんの顔を見てくださいヨ」
葉留佳さんが空いている手で手招き。
「あーコホン……」
「キレイな顔してるだろ…男なんだぜ、これ」
なぜか急に男っぽく変なことを言い出す葉留佳さん!
「あははははは、一回やってみたかったんだーっ」
「わふー…こんな間近で見たのは初めてですが…本当に可愛らしいのです」
「かわいいよねー…」
「……男にしておくのは勿体無い……いえ、男だからこそこんなに萌えるのでしょうか?」
みんなが僕の顔とくっつきそうなほど顔を近づけてくるっ!
「うわわわわっ、そ、そんなにまじまじと見つめないでよっ」
「うわっ!? 今こいつ、照れたぞっ」
「照れた顔もかわいいーっ」
「目を斜め下に反らすところがまたそそられるな」
「そそらないでよーーーっ!!」
「な・お・え」
「か、佳奈多さん!?」
佳奈多さんが火照った顔と潤んだ瞳で僕を見上げている!
腕にくっついたせいか、甘えんぼモードが発動してしまったようだ!
「かお、真っ赤」
つん、と指で頬をつつかれた!
「――――~~~~~~っ!!」
あまりの恥かしさに体が震える!
「「「「「「「かわいい~~~~っ」」」」」」」
「今、プルッとして目がウルルってしたぞっ!?」
「理樹ちゃん、わ、わ、私もつついて、つついちゃってもいいっ!?」
「ダメだよ小毬さ……わっ!」
小毬さんの目はもはやいつものそれじゃないっ!
「ほわわ…やわらか~い! ぷにぷに~、ぷにぷに~」
「私もやりたいのですーっ!」
「いやいやいやっ……あうっ」
「ほれほれーです~マシュマロみたいなのです~……むにむに」
恍惚とした表情のクドが、とろんとしながら僕のほっぺに小さな指を押し付けてくるーっ!
「ならあたしは理樹の足で遊ぶぞっ 覚悟しろ、理樹っ」
「いや、覚悟って…」
「おやゆびー♪ ひとさしゆびー♪」
「り、鈴ダメっ、くす、くすぐったいでしょーっ」
鈴は鈴で僕の足の指を靴下の上から摘まんでくるしっ!
「んじゃはるちんは耳たぶ攻撃だーっ」
「え……あ、ひゃうんっ!?」
足に意識を取られてるところに耳たぶを触られたものだから、ついうっかり声が出てしまったっ!!
「…………」
「「「「「「「きゃぁ~~~っ!!!」」」」」」」
みんなが大きな瞳をクリクリさせてキュンキュンした顔で僕を見つめているっ!!
「いいい今の理樹ちゃんの声を聞きましたか、みなさんっ!?」
「ひゃうんって言いましたっ! ひゃうんって!」
「……快楽に溺れる直枝さん……ぽ」
「ハァハァ、お、おねーさんはもう辛抱たまらんっ!」
やばい!!
僕の一声がみんなのサディスティック心に火をつけてしまった!!
「理樹ちゃんの耳に私もさわらせて~」
「小毬さんばかりずるいのですー! 私も触りたいのです~っ」
「ひゃぁ~、み、みんなーっ」
「理樹のこの身をよじる様子がたまらないな」
「り、鈴まで何言っちゃってるのさーっ」
「……男性も胸は感じるのでしょうか?」
西園さんが突然ボソりと呟いた。
「へっ!? なっ!?」
「よし、実証だ」
「葉留佳君佳奈多君、バンザイのポーズをさせるんだ」
「はいよっ」「こんな感じ?」
葉留佳さんと佳奈多さんが抱えてた僕の手を上に向ける!
「ちょちょちょちょちょちょちょっ!?!?!?」
「……コナミコマンド」
西園さんの瞳がギラリと輝く!
「!?」
「……コナミコマンドは知ってますか?」
「……答えてください」
「え……あ、たしか上、上、下、下、左、右、左………………ってっ!?」
サササササーと血の気が引く音が自分でも聞えた!!
「Bはどっちだ?」
「左で良いかと」
「……では、さっそく」
「ショータイムだ」
「あ…いや…だから……やめ、やめ……」
「…クフフ…」
「…ふふふ」
日曜日に新しいおもちゃを買ってもらった子どものような顔した西園さんと来ヶ谷さんの手が僕の両胸に伸びてきて…………――
「ひいいいいいやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!」
僕はブラックアウトした…。