SSブログ TJ-Novelists

アニメやマンガ、ゲームから妄想したSS(ショートストーリー)を書き綴るブログです。

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62.争奪戦! 理姫のハートを奪え!

 

 

 

 #シチュ:理樹に生き別れの双子の妹『理姫』がいたのです! そして男性陣が不穏な動きを見せる…!

 

――夜の学食。

「はぁ…」

「お兄ちゃん、どうしたの? 具合でも悪い?」

 僕とそっくりな――違いといったら服装とロングヘア――の少女、直枝理姫がクリクリとした瞳で僕を覗きこんできた。

「溜息の一つもつきたくなるよ…」

 双子の妹の理姫を連れてきて紹介したときと言ったら……まさに壮絶の一言だった。

 まずは、来ヶ谷さんが早速「よろしくたのむ」と理姫の肩を抱き寄せようとした。ここまではいつも通りだ。

 僕ならそうされたら「いやいやいや!?」と返すけど、理姫は「はい、こちらこそ♪」と来ヶ谷さんに体重をあずけちゃって……。

 ……あんなに幸せそうな顔で失神する人は今まで見たことなかったよ……。

 恭介は恭介でいきなり「君の大きな瞳に恋しちまったようだ」とか言い出す始末。

 その途端、恭介は鈴のドロップキックで吹っ飛ばされていった。

 恋しただなんて恭介はもうっ。

 ちなみに謙吾と真人は今、そこでケンカの真っ最中だ。

 理由は「理姫ちゃんがさっき笑いかけたのは俺にだ!!」だったっけ…。

 

「……これはマズイですね」

 西園さんがボソリと呟いた。

「え、何が?」

「……男性陣のことです」

「ふえぇ? 男性陣って恭介さんたちのこと?」

「……はい」

 いったい何がマズイんだろう?

「今まで恋焦がれる相手が男性の直枝さんでしたので、彼らは自制心を保ち行動を起こさなかったのです」

 いや、恋焦がれるって…。

「ですが、今は理姫さんがいらっしゃいます」

「私?」

 目をパチクリさせる理姫。

「はい、恋焦がれる相手と恋が実らない場合、人は代償行動を取ります」

「この場合、男性である直枝さんとの恋愛がいつまで経っても成就しませんでしたので、そっくりな理姫さんに走るということです」

「いやいやいや、さすがにそれは――」

 ないよと言おうとしたとき、恭介たちの姿が目に入った。

 

 彼らはスーツに身をくるみ、

「リトルラブラブハンターズ再結成だ!」

「「おーーーっ!!」」

 とやっていた…。

 

「――内容は簡単だ」

「俺たち3人がそれぞれ理姫にアタックする」

「理姫は誰が一番魅力的だったか選んでくれ」

「いいか?」

「はい♪」

 ポン、と両手を合わせ嬉しそうに口元をほころばせる。

「お兄ちゃんから聞いてたけど、本当にいつも面白いことやってるんだね」

 あの嬉しそうな微笑み、本当に楽しそうだ。

「嫌なら嫌っていわないとダメだぞ」

「ううん、鈴さん、私はぜんぜん嫌じゃないからね」

「なにぃ、おまえそれでも本当に理樹の妹かっ!?」

「わふー…リキでしたら嫌がるところを、理姫さんはまったく嫌がらないのです…」

「むしろ余裕の笑顔で受け入れてますナ…」

「なんか理樹くんの妹っていうより、お姉ちゃんみたいだね~」

「あ、あはは…」

 うーん、小毬さんの言う通り双子の妹ながら性格はまるでお姉さんだ…。

 

「んじゃ、一番手はオレな」

 真人が理姫に近づく。

「理姫ちゃんよ、まあ、オレの話を聞け」

「はい」

「明日から毎朝オレを起こしてくれっ!」

「はい♪」

「……」

「……」

「へ?」

「だから、はい♪」

「毎朝だぞ?」

「何時に行けばいいのかな?」

 私で良ければ、というナイチンゲール顔負けのエンジェリックスマイルを真人に向ける。

「え…いや…おまえが好きな時間でいいけどよ…」

「じゃあ、ご飯も食べないといけないし6時半なんてどう?」

「お、おう……いや、ちょっと待て!」

「?」

「オレ、寝起きは寝汗も寝癖もひどくてよ…。さすがにそのままで会うのは」

「身支度すっから7時でいいか?」

「……それでは起こしにきてもらう意味がないのではないでしょうか?」

「うおっ!? そこは盲点だったぁぁぁーーーっ!!」

 どこが盲点だったんだろう…?

 

「フッ、次は俺だな」

 白のタキシードに身を包んだ謙吾がすっくと立ち上がった。

 手には薔薇の花束だ…。

「いよっ、ロマンティック大統領ーっ」

 葉留佳さんからの声援をクールな笑みで流すと、そのまま理姫の前に立つと…。

 片膝を着き、花束を差し出した!

 しかも花束をよくよく見ると、赤い薔薇の中に黄色い薔薇で『LOVE』の字が描かれている!!

 演出細かいっ!

「理姫、俺の気持ちだ! 受け取ってくれっ!!」

「うわぁ…ありがと」

 バラの花束を抱え、すごく嬉しそうだ。

 さすが謙吾。ロマンティック大統領だけあって女性が喜ぶポイントを突いてきている!

「謙吾君の気持ち、たしかに受け取りました♪ 花言葉は何かな?」

 西園さんが目をやんわりと閉じた。

「……黄色のバラの花言葉は……」

「『不貞』です」

「……」

「……」

「こまりちゃん、不貞ってなんだ?」

「それはあれだよ、浮気しちゃうよって意味だよ……って、謙吾くんっ!?」

「わふー! お付き合いの前から堂々と浮気宣言なのですーっ!!」

「そこまで考えていなかったぁぁぁーーーっ!!」

 ロマンティック大統領、あえなく撃沈。

 

「だらしのない奴らだな」

 最後に黒のタキシードを着こなした恭介が立ち上がった。

 そして理姫の前に立つ。

 あれれ?

 それだけで理姫の顔がちょっと赤くなっているような…?

「あれ、理姫ちゃん顔赤くなってないスカ?」

「な、なってないからーっ!」

 慌てる辺りがどうにも怪しい。

「よし理姫、俺としりとりで勝負しないか?」

「しりとり…?」

「そうだ。ただし、負けたら勝った方のいうことを聞くこと」

「いいか?」

 理姫が一瞬と惑ったものの、コクリと頷く。

「OK。じゃあ、しりとりの『り』からな」

「俺から行くぞ」

 優しい笑顔を理姫に向ける。

「『理姫』」

「…え?」

 名前を呼ばれて、理姫の頬に朱色が差し込む。

 …目は恭介を捉えることなく泳いでいる。

「『理姫』だから、『き』だぜ?」(補足説明:このころは『りひめ』ではなく『りき』でした)

「あ、き……『き』だね」

「……」

 理姫は俯きながら手をモジモジさせたり、スカートの裾を掴んだりとどうにも落ち着いていない。

「……き……」

「……『きょうすけ』……」

 まるで吐息を吐き出すように恭介の名前を囁く。

「理姫に恭介、いい流れじゃないか」

「じゃあ俺は『け』か」

「……け……け……け……」

「ああ、ひとつあったな」

 恭介がゆっくりと、右手を理姫に差し出した。

 

 

 

「結婚しよう」

 

 

 

「………………っ!!」

「う、だぜ?」

 

 

 

「…うん」

 

 

 

「おまえの負け、な」

 

 二人の手が静かに重ねられた。

 

 

「「「き……き……」」」

「「「きゃぁ~~~~~~~~~んっ♪」」」

 女性陣から絶叫に近い黄色い声が上がる!

 

「うわぁ~! あんなプロポーズ私もされたい~~~っ!」

「理姫さん羨ましすぎなのです~~~っ! 恭介さんステキすぎなのですーっ!!」

「いやぁー、なんかこっちまで恥かしくなってきますナ」

「……これは女冥利に尽きるというものです……ぽ」

「くっ、ロマンティック大統領の名は恭介にくれてやるっ」

 みんな赤くなった頬を抑え、二人を見守っている。

 

 

 って!!

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待っ、待っ、待っーーーっ!!」

「んだよ理樹っちよぉ、スゲーいいところなんだから落ち着けって」

「いや、だって、きょ、きょ、恭介がっ!!」

「……突然現れた、しかも妹に盗られて混乱しているのですね」

「い、いやいやいやいや、そうじゃなっ、ないけどっ」

「ぜっったいダメだからぁぁぁーーーっ!!」

 

 

 

 

 ちなみにこのプロポーズは『プラネテス』よりw

 以下は、もしも理姫が誰かと付き合うことになってしまったらというコメントへのレスw

 

 ※レスより

 

 理樹だったら、きっと許しちゃうと思いますよ。

「そっか…理姫が決めたんだから、絶対大丈夫。応援してるよ」

 とバッチリ送り出しそうです。

 その後に泣きながら来ヶ谷さんに愚痴る理樹w

 こうなると思います。

 

 きっと来ヶ谷さんなら

 

 

「……少年、もう泣くな。男の子だろ?」

「うん……ぐすっ、ぐすっ」

「……」

「もう、大丈夫だから……ぐすっ、えぐえぐっ、ぐすっ」

「……」

「愚痴を聞いて、聞いてくれてありが、とね……ぐずっ」

「……」

「ぐすっ、ぐすぐすっ」

「ええい、うっとおしい!」

 

――がばっ!!

 

「うわっ!? く、来ヶ谷さん!? なんで僕を抱きしめ…!?」

「今日だけはおねーさんがキミを受け止めてやる。だから――」

「け、けど…」

「黙って聞け」

「…あぅ…」

「……いきなり抱きしめてしまってすまないと思っている」

 僕の頭を来ヶ谷さんの温かな手が愛おしそうに撫ぜる。

「……」

「…私は壊れそうなキミをただ見ているなんて……出来るほど器用ではないのだよ」

「今日だけは、こうしてキミを抱きしめてやる」

「だから――」

「明日からはいつもの笑顔のキミに戻ってくれ」

「……」

「……」

「……」

「……ありがと、来ヶ谷さん……」

「ああ…」

「……」

「……」

「……来ヶ谷さん」

「……ん…?」

「…とってもあったかいよ」

「私とて生き物だからな」

「心が、だよ」