――学園祭当日の朝。
「………………き」
「着替えました」
今までに無いくらい最高にブルー色を発している佳奈多さん。
「なんで私がこんなことしなきゃならないのよ…」
なぜこんなにもテンションがメランコリー状態かと言うと…。
「わぁぁ……二木さん最高に…いえ、棗さんの言葉を借りるとくちゃくちゃ可愛いわっ!!」
「ぜんっぜん、全く、ちっとも嬉しくありません」
今寮長室に立っている佳奈多さんは、チャイナドレスに身を包んでいる。
足元は高めのハイヒール。
腕組みをして不貞腐れている様子が、結構チャイナドレスに似合っている…といったら悪いかな。
「あら直枝くん、早速二木さんに見とれてるわね~?」
「い、い、いやいやいやいや…」
う…正直見とれてたけど、そうハッキリ言われると困るっ!
「直枝」
僕を睨みつけてくる佳奈多さん。
「な、なに?」
「目線がいやらしい」
「そ、そんなつもりないからっ」
もう佳奈多さんまでっ!
「――下はスパッツって言ったけど、どしたの?」
寮長が佳奈多さんの脚を見ている。
「スパッツですとスリットから脚が見えたときに見栄えが悪いので、学校指定の水着で代用しています」
「二木さんってさ、嫌がってる割には変に凝り性よね」
「…放っておいてください」
「――では、校内巡回してきます」
「いってらっしゃ~い」
「頑張って」
僕と寮長で佳奈多さんを見送るが…。
――ヨロヨロ、ヨロヨロ…
どうにも足元が覚束ない。
「もしかして二木さん、あんまり高いヒールの靴は履かない?」
「あ、は…はい」
返事をした瞬間。
「え!? あ、きゃっ!?」
――くきっ、すてーーーんっ!
佳奈多さんが盛大にコケた!
――ぽかっ
「はうっ!?」
しかも、転ぶときに足から飛んでいったハイヒールが佳奈多さんの頭に直撃した!
「あたた……」
「二木さんっ!?」
「大丈夫、佳奈多さん!?」
「だ、だいじょうぶ…」
床に手を着いて上体だけ起こす佳奈多さんだが…
「う…」
「ど、どうしたの直枝くん…顔真っ赤よ?」
「……」
「……」
「は、ちょ、ちょっと直枝っ!? ど、どこ見てるのよっ!!」
ザッとスリットを両手で閉じる佳奈多さん!
「ごっごごご、ごめんっ!」
「最低っ、ホント最低最低最低っ!」
「わーわーわーっ、ホントそんなつもりなくて…ごめんっ!」
な、なんで男ってそういうところに目が行っちゃうんだろうっ!