前回の続きです。
「ただいま」
「あ、佳奈多さん。お疲れ様」
――夕方の寮長室。
学園祭も終わりの時間に差し掛かっている。
佳奈多さんは……なんとチャイナドレスで校内巡回をしていた。
寮長のアイディアだ…。
寮長曰く
『いつも通りの格好でツカツカ歩いてたら場の雰囲気壊れちゃうでしょ?』
『郷に入っては郷に従え、って言うじゃない』
『そうね…風紀委員はチャイナドレスで巡回ってどうかしら』
もちろん佳奈多さんは猛反対したが…。
各所からの猛烈プッシュで意見が一瞬に規定に変わってしまった…。
佳奈多さんもシブシブしたがった訳で。
「もうやってられないっ!」
ドカっと窓側の方にあるイスに腰を下ろす佳奈多さん。
朝から見ているから慣れてきたけど…凛とした態度の佳奈多さんにはチャイナドレスが妙に似合っている。
ピンク色のチャイナドレスで、もちろん片側に深くスリット。
そのスリットからは、黒の薄いストッキングで覆われた足が顔を覗かせている。
…佳奈多さんの足は程よい肉付き。スポーツをしていたのかキュッ引き締まっていて、とても誘惑的だ。
「言い出しっぺのあーちゃん先輩にもやってもらいたいわ」
スリットから伸びた足を組んむ佳奈多さん。
「直枝もそう思わない?」
「……」
「……」
しまった!?
ついつい佳奈多さんの足に見とれてしまっていた!
「…ふ~ん」
僕を見た佳奈多さんの顔が、まるで面白いオモチャを見つけたかのような妖しい表情に変わっている。
「ねえ…」
「な、なに?」
――ツカツカ。
佳奈多さんがさっき座っていた席から立ち上がって、僕の隣のイスに腰掛けた。
「すっかり疲れちゃった」
嘘くさく大きく息を吐き出す佳奈多さん。
――ごそごそ、ぽいっ。ごそごそ、ぽいっ。
「…?」
おもむろに履いていたハイヒールを脱ぎ捨てた。
「疲れるわ、ハイヒールって」
イスに座ったまま脚を伸ばし、ストッキングだけになった足を宙でクイクイと伸ばしたり縮めたりしている。
「あぁ、そうだわ」
佳奈多さんが、これまたワザとらしく気付いたような言葉を発した。
イスの上で腰を90度回し、僕の方を向く。
――ぼすっ
「ちょ、ちょっと!?」
僕の太ももの上に、スリットからスラリと伸びた脚を投げ出す佳奈多さん!
「ねえ、揉んで。私の足」
「ええっ!?」
「ええ、じゃなくて。疲れてるの」
「揉んで」
いきなりそんなことを言い出し始めた!!
「け、けどっ」
佳奈多さんの黒ストッキングに包まれた脚が僕の太ももの上に無造作に投げ出されている。
顔に目をやると、いかにも気だるそう。
「足とふくらはぎまで。太ももには絶対触らないで」
「触ったらセクハラで懲戒処分にするわ」
「いやいやいや…」
僕がしぶっていると…。
「ほら、どうしたのよ?」
「ね~え?」
佳奈多さんがもう片方の足を僕のヒザに上げて、足の親指でクリクリしてきたっ!
「ねえってば、ほら、早く」
「どうしたのかしら?」
妖しい笑みを浮かべながら、僕のヒザに足の指で円を描いたりしている。
「あら…顔が真っ赤よ」
「熱でもあるのかしら?」
「ほら、早くしなさいよ」
……佳奈多さんの顔は、捕まえた虫をいたぶる無邪気で残酷な子どものようだ……。