朝。
私はは誰よりも早く教室に向かいました。
だって今日はバレンタイン。
私みたいに勇気がなくても…ちょっとだけ頑張れる一日。
「直枝くん…食べてくれるかな」
キレイにラッピングした包みを持つ手にキュッと力が入る。
この日のために2月の初めからダイエットしたから大丈夫っ!
……ほんのちょっぴりだけお菓子食べちゃったけど……。
それに髪だってちょっと高いシャンプーを使ってきたからいい匂い。
あとは、直枝くんにチョコを手渡しして…。
直枝くんにチョコを手渡し……っ。
どっきどっき。
どっきどっき。
わ~、わ~、わ~~~っっっ!
ちょっと考えただけで緊張してきた…っ!
直接なんて…私には、ム、ムリ…っ。
や、やっぱり直枝くんの机にチョコを入れておこう。
うん。
それなら私にだって。
そう思ったとき。
――コツ、コツ、コツ。
わーっ!?
誰かが廊下を歩いてきたっ!
私は慌てて教卓の後ろに隠れました。
――コツ、コツ、コツ。
足音が近づいてくるっ!
直枝くんの机にチョコ入れたいのに…っ。
――コツコツコツ、ピタ。
うそっ。
教室の前で、と、とまっちゃった!
ど、どうしようっ!
な、直枝くんの机にチョコを入れれないよ~っ。
………………。
…………。
……。
な、何も音がしない……?
ビクビクしながら教卓の後ろで息を殺して、そっと様子をうかがうと……。
「むーつみっ!」
「ひゃわぁっ!?」
「あはははははははっ、こんなとこでコソコソなにしてんのさ?」
「た、高宮さんっ」
見上げると、そこにはニヤニヤした高宮さんが立っていました。
「そりゃ友達が教卓の後ろでコソコソしてたら驚かしたくもなるっしょ?」
「うううぅ…」
「ん? 睦美が持ってるその包み…」
「ひゃっ!? こ、こ、これはっ」
慌てて後ろに隠したけど、高宮さんが途端にすごいイジワル顔になった。
「あ、もしかしてそれって直枝にプレゼント?」
ひゃぁっ!?
バレたっ!
「ちっ、ちち、ちっ、ちが、ちがうよ~っ!」
うわうわうわーっ!
は、恥かしくて顔が熱いよーっ!
「へぇ~~~直枝じゃないんだ? なら一体誰にプレゼントさぁ?」
ニヤニヤと顔を近づけてくるっ。
「これはねっ、あの、あのねっ…えっと…これは、その……」
「ホレホレ、言ってみーっ」
ど、ど、どうしようっ。
「だっ、だから……」
「じれったいなー。言わなくていいからそれ、見せてみ?」
「ひゃぁっ!? ダメだよ~っ」
私が高宮さんの伸ばした手からチョコを逃がしたときだ。
「おっと、失礼。筋肉が通りまーす……ん、なんだよこれ?」
偶然にも、チョコが通りかかった井ノ原くんの手の上に乗った。
「……」
「……」
「……」
「うおぉぉぉぉぉーーーっ!! 生まれてこのかた初めてチョコをもらっちまったぁぁぁーーーっ!! 杉並サンキュゥゥゥゥゥーーーッッッ!!!」
「えええぇぇぇーーーっ!!」
わ、私のチョコを井ノ原くんが涙を流しながら天に掲げてるーっ!
「いっ、井ノ原くん、そ、それ……っ! あ、あの、違」
――ガッ!
井ノ原くんのガッチリした手が私の両肩をつかんできたっ!
「ひっ!?」
わ、わたし、た、食べられる…っ!
「杉並ッ!!」
「ひゃぅうぅうぅ……っ」
「オレ、おまえからもらったチョコ……額に入れて飾ることに決めたぜ……」
「ちょっこら今から額を買ってくるなっ!! ちぃとばかり厚みがあるが、魚拓みてぇにすればなんとかなりそうだ! ひやっほぅ!!」
――ズダダダダダダダダダダ……――
井ノ原くんは本当に嬉しそうに走り去った……。
「睦美」
ポンと肩に高宮さんの手が乗せられた。
「……ガンバ!」
「う、ううう……が、がんばれないよぉ」
はいw
小動物杉並さんw
なんとなく努力が別方向に行ってしまう子のような気がしますw
杉並さんの顔はきっと(>△<;)こんな感じw