SSブログ TJ-Novelists

アニメやマンガ、ゲームから妄想したSS(ショートストーリー)を書き綴るブログです。

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150.宮沢謙吾の憂鬱

#シチュ:謙吾の夢がアレです。

 #『宮沢謙吾の憂鬱』

 

 

――冬の屋上。

 俺と理樹は満天の星空の下、二人きりで冬のロマンスに興じていた。

 『理樹、夜空を見上げてみろ。宝石のような星が散らばっているぞ』

 『本当だね、謙吾』

――俺だけに向けられる理樹の愛くるしい笑顔。

 『寒くはないか?』

 『少し』

 『なら俺の方に寄ればいい』

 『…いいの?』

 『構わん』

 『じゃあ、ちょっとだけ』

 理樹が俺とのスペースを縮める。

 少しだけ肩が当たった。

 『わっ』

 赤面した理樹が慌てて身を離そうとする。

 『……』

 俺はあえて何も言わなかった。

 その反応を見てか、理樹が安心したように俺のすぐ横に立ち、肩と肩が触れ合った。

 俺は自分のマフラーを伸ばし、理樹の首にそっと掛けた。

 『こうすれば寒くないだろう』

 『謙吾……うれしい』

 

 夜空の下で二人きりの静かな時間が流れる。

 

 『理樹よ、あそこにまたたく星を見てみろ』

 『どれ、謙吾?』

 『あの大きく光っている星だ。あの星と近くの星を結んでみろ』

 『結ぶって……あっ! 星と星を結ぶとLOVEの文字になってるよ、謙吾っ』

 『ああ、そうだ理樹。まるでそう…俺と理樹のことを言っているようではないか?』

 『まさかこれって…』

 『フッ……どうやら、冬の夜空が俺の気持ちを代弁してしまったようだ』

 『ロマンチックなんだね、謙吾は…』

 胸元に手を当てた理樹が、潤んだ瞳で俺を見上げた。

 やがてそっと目を瞑り、そっと口を俺の方へと向ける理樹。

 そのあごに手を当てると、ピクリと理樹が反応した。

 『理樹……』

 『謙吾……』

 俺と理樹の顔が徐々に近づき、唇と唇が――

 

 

「どぅッハァッ!?」

 

――ガバァッ!!

 

 飛び起きるとそこはいつもの見慣れた寮の部屋だった。

「はぁ、はぁ、はぁ…………」

 額の汗を拭う。ひどい汗だ。

 高鳴っている心臓を押さえ、無理に呼吸を整えようと努力する。

 …………。

 な……。

 なんという夢を見ているんだ、俺は!!

 俺は理樹を親友として好きなのであって、決して恋愛感情があるわけでは……

 

 『理樹……』

 『謙吾……』

 俺と理樹の顔が徐々に近づき、唇と唇が――

 

「ぬっふぁあぁあーーーっ!!」

 思わず髪を掻き毟った!

 ええい、何を考えているのだっ!!

 理樹はそもそも、お、男なのだぞ!?

 ではなくだな!

 理樹は俺のかけがえのない親友だ。

 理樹は親友であり……

 

 『理樹……』

 『謙吾……』

 俺と理樹の顔が徐々に近づき、唇と唇が――

 

「ぬぉおぉおぉーーーっ!!」

 バキンッ、ゴギンッ!

 悶絶のあまり、思わず竹刀を叩き折ってしまった!!

 ち、違うぞ…!!

 俺と理樹はただの親友なのだ!

 決してそんなやましい感情はあるはずがない!!

 く、くだらん!

 まったく妙な夢を見てしまったものだ。

 俺は身支度を整え、学食へと向かった。

 

 

「――おはよう」

「うぃす、遅かったじゃないか」

「おめぇが最後なんて今日は雪でも降るんじゃね?」

「色々とあってな。それと真人、すでに外は雪が積もっているからな」

 いつものように俺は理樹の隣の席に腰を下ろした。

「おはよう、謙吾」

「ぐっ…お、おはよう」

「なんで目をそらすのさ?」

「い、いや、な、なんでもないんだ」

 まずい。

 なぜだ?

 理樹を見れない。

 べ、別に俺は理樹のことをなんとも思ってはいないのだ。ここは自然に、自然に…。

「謙吾、どうして理樹との隙間をそんなに空けるんだ?」

「くちゃくちゃ体がななめってるな」

 まずい。

 り、理樹を意識してしまっているじゃないか!

 ……。

 『意識』ってなんだ!? 相手は親友だぞ!? 男なのだぞ!?

 お、俺はどうしてしまったんだ!!

 

「こいつ変なもんでも食ったのか? 頭を抱えてウネウネしてるぞ」

「放っておけ、鈴。謙吾だってたまにはおかしくなるさ」

「ふみゅ、そういうこともあるのか。なら安心だ」

「いやいや、心配してあげようよ…」

 

 チョンチョンと剣道着の袖を引かれた。

「むぐぅ……む?」

 引かれた方を見ると、理樹が俺のことを見つめていた。

「謙吾どうしたの? 大丈夫?」

 俺のことを心配そうに見つめる理樹。

「り、理樹」

「具合でも悪いの? 一緒に保健室に行く?」

 俺は…俺は…。

 こんなにも優しい親友を変な目で見てしまっていたのか!

 恥にも程というものが――

 

「僕でよかったら何でも言ってよ。謙吾のためだったら何でもするよ?」

――ニッコリ!

 理樹の愛くるしい笑顔が。

 俺の胸を貫いた。

 

「…っ!」

 ドッキドッキドッキドッキっ!

 理樹の花のような笑顔で胸が脈を高めてゆく…!

 理樹の顔をまともに見ていられない。

 お、俺は…俺は…!

 

――ガタタンッ!

 

 席を引っくり返しながら立ち上がった。

「け、謙吾?」

「どうしたんだよ?」

 

 俺は学食から逃げるように走り出した!

 『け、謙吾ーっ!』

 後ろから聞こえる理樹たちの声を無視して全力で渡り廊下を駆け抜ける!

 

 俺は…。

 俺は……っ!!

 本当に理樹に惚れてしまったのか!?!?

 

 

 続…かないっ!w

 ふとこんな薔薇小ネタを書きたくなっただけですw

 謙吾の憂鬱w