SSブログ TJ-Novelists

アニメやマンガ、ゲームから妄想したSS(ショートストーリー)を書き綴るブログです。

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146.スゴロクでスゴいやリトルバスターズ!(後編)

#家庭科部の部室(和室)で恭介考案のスゴロクをプレイ中ですw

 

 

 次は恭介がサイコロを振る番だ。

 ちなみに恭介はさっきの謙吾からのダメージ(?)が大きかったのか、まだ少し顔が青い。

「さっきはひどい目に遭ったからな。いいのを頼むぜ」

 

――コロコロコロ。

 

「わふー、またもや5がでましたっ」

「へ? それ、私と同じマスじゃん」

 そこに書かれているのはもちろんさっき葉留佳さんがやったのと同じだ。

 

 『左隣の人を膝枕してあげる』

 

「お、こいつは新年早々ついてるんじゃないか? さて、俺の隣は…」

 少年の様に嬉しそうな顔が、恭介の隣に座っていた僕に向けられた。

「理樹、膝枕してやるぜ?」

「いやいや、僕は右隣だからね」

「ズルっこはダメだよー」

「悪い悪い、冗談だ」

 ……たぶん何も言われなかったら実行していたに違いない。

 

「俺の左隣は、っと」

 恭介が左を向いた。

「バブゥ?」

 真人と目が合った。

 

「だああああぁぁぁーーーっ!? マジかよっ!?」

「チャァァァンッ!?」

 お互い仰け反るように叫ぶ二人!

 そして真人は驚いても律儀に赤ちゃん言葉だ!

「やははー、やれやれーっ!」

 自分じゃなくなった途端に葉留佳さんはこの調子だ!

「わ、わふー…井ノ原さんを膝枕ですか…」

 いやなんでクドは羨ましそうなんだろう?

「良かったじゃないか恭介氏、新年早々ラッキーなのだろ?」

「全然ラッキーじゃねぇよっ!」

「たぁいっ!! バブバブッ!!」

「真人少年に至っては嫌がっているのかいないのかわからんな…」

「……どうでもいいですが、さっさと終わらせてください。全く美しくありません」

 西園さんは妙に怒っている!

「ノンノン、みおちゃんそれは違います。ひざまくらってちょっと幸せだよね」

 振袖を揺らし指を立てる小毬さん。

「だから1分くらいしてあげればいいと私は思うよ?」

「はぁっ!?」

「チャァンッ!?」

 さらっと難易度を押し上げた!

 青を通り越して土気色になる2人の顔色。

「ふえぇ?」

 けど小毬さんは完全に悪意ゼロだ!

 これじゃあ反論のしようがないっ!

「くっ……」

 苦虫を噛み潰したような顔の恭介。

「わ……わかった…」

「そもそも俺が作ったゲームだしな、腹をくくるしかなさそうだな」

 恭介の目が真人に向く。

「真人」

「たぁい」

「……」

「……」

 2人が見つめ合い、そしてどちらからともなく頷いた。

「おまえらっ……」

「俺たちの勇姿をその目に焼き付けておけっ!」

「真人、俺のヒザに――」

 恭介の目がカッと見開かれた!!

「来るんだっっっ!!」

「へっ…。バブゥゥゥーーーッ!!」

 真人がすごい勢いで恭介のヒザに体ごと頭を振り下ろす!!

 

――ドガァンッ!

 轟音と共に、真人が恭介のヒザに横たわった!

「これが俺たちの…膝枕だッッッ!!」

  シュゥゥゥ……。

 そんな擬音が聞こえてきそうだ…。

 完成してしまったんだ…。

 恭介と真人の膝枕が。

 

「まるで修羅のような顔つきだな…」

 謙吾の言うとおり、二人とも死を覚悟した戦士のような顔だった。

「……金剛力士像の膝枕バージョンといったところでしょうか?」

「わふー…これが漢の生き様なのです」

「なんというか、こんなに威圧感を放っている膝枕は初めて見ましたヨ」

「……」

 みんなが圧倒される中、鈴だけは肩をすぼめていた。

「どうしたんだ、鈴?」

「うちの兄貴は、就活中に男を膝枕してた、なんて、恥ずかしくて人に言えない」

「そんなこと言わないでくれぇぇぇ!」

 そりゃそうだよね…。

 

「では、ねくすとちゃれんじゃーは私ですっ」

 クドが勢いよくサイコロを振った。

 数字は……3。

「わふーっ、これは井ノ原さんとご一緒なのですーっ」

「それはつまり、クドリャフカ君も赤ちゃん言葉と言うことか」

「はぁい、ばぶぶ~、なのでしゅっ」

 しゅたっ、と手を上げるクド。

「ぐ…こ、これは萌えるだろ…」

「うわ、姉御がコタツで悶絶してますヨ…」

「ハァイ!! バブブゥーッ!!」

「いや…真人は対抗しようとしなくていいからね…」

 

「……気を取り直して、わたしの順番です」

 西園さんがサイコロを振った。

「……2です」

 そこのマスには。

 

 『得意な歌を一曲歌う』

 

「ほう、西園女史の歌か。これは楽しみだな」

 うーん、西園さんが歌うって想像がつかないけど大丈夫かなぁ。

「……人前で歌うのは恥かしいですが、参ります」

 僕の心配をよそに、晴れ着姿の西園さんがすっくと立ち上がった。

「みおちゃん、がんばってー」

「わくわくなのですーっ」

 みんなの応援が響く中、西園さんがマイクを持つフリをして歌い出した。

「『水面が~揺らぐ~♪』」

 しかも振りつきだ。

 振袖の袖がゆらゆらと揺れている。

 けど無表情だ!

「みおちんノリノリーっ」

「『キラッ☆』」

 人差し指と小指を立てたどこかで見たことがあるようなポーズをとる西園さん。

「『流星にまた~がって♪』」

「うわぁ、みおちゃん歌じょうず~っ」

「よし、西園のことはこれから超自重シンデレラと呼ぶことにしよう」

「恭介…そのネーミングはどうかと思うよ…」

 

 続けて。

「ん、あたしは6か」

「私も6だよ~」

「お2人ともコタツで一回お休みなのでしゅ~」

 ということは…。

「ゆいちゃん、おじゃましまーす」

「やっぱり寒いからな。こたつでぬくぬくはさいこーだ」

「こ、ここは天国なのか!?」

 振袖姿の2人にコタツで囲まれた来ヶ谷さんは嬉しすぎて戸惑っていた!

「よし鈴君。横に座ってないで私の膝に座るといい」

「い、いやだっ」

 来ヶ谷さんの目がギラリと光った!

「断ってもいいが…そこは背中が寒いだろう? 私の上に座れば足元はコタツ、背中は私の体温でそれこそぬくぬくだぞ?」

「う、うみゅみゅ…」

「どうだ? 入らないか」

 コタツとの間にスペースを空けて待つ来ヶ谷さん。

「……」

「……入る」

――ストン。

 鈴が来ヶ谷さんの膝の上に腰を下ろした。

「やはり鈴君は後ろからの抱き心地が良いな」

「うわ、こらっ、後ろから抱きつくなーっ」

「なんだ? くっついたほうが温かいだろ?」

「ふっふっふー…」

 さらに来ヶ谷さんの後ろに立つ影。

「私は、そんな2人にまとめて抱きついちゃうよーっ」

 

――だきーっ!

 

 さらに来ヶ谷さんの後ろから小毬さんが抱きついたっ!

 手は鈴まで回されて、来ヶ谷さんがサンドイッチにされている状態だ!

「こ、小毬君、そんなにくっつかないでほしいんだが」

 やっぱり来ヶ谷さんはそういうのが苦手なのか、顔を赤くしている。

「私もゆいちゃんとりんちゃんをね、ぎゅっとして温めてあげたいのです」

「こ、こら、ほ、ほっぺたを私の頬にくっつけるな」

「ふえぇ? 何で?」

「私はそういうのは…そ…そんなにスリスリしないでほしいんだが…」

「わ、ゆいちゃんのほっぺ、こんなに柔らかいよ? えへへ、すりすり~すりすり~」

「う…くっ!」

「うわっ、こまりちゃんの手が変なところさわったっ」

「だいじょーぶ、りんちゃんに変なトコなんてありません」

「2人まとめて、ふにふに~~~ふにふに~~~」

「ふみゃぁ~っ!?」

「くそ、こうなったら私も鈴君に攻撃だ」

「うわぁっ、着物の下めくるなっ! ふみゃみゃっ!? 足さわさわしたなーっ!?」

 晴れ着姿の鈴と来ヶ谷さんと小毬さんが折り重なってきゃっきゃうふふと戯れているっ!

 

「……男がいること忘れてないよな、あいつら……」

 冷や汗を流す恭介。

「お、俺は何も見てはいない!」

 謙吾、顔まっかだよ…。

「タァイ、バブゥ」

 真人は本当に興味無さそうだ…。

 

 

「最後の順番は僕だね」

――コロコロ。

「お、4だな」

「今まで出てない数字だね」

 そこを見ると。

 

 『好きな人を暴露する』

 

「ブっ!?」

 他のに比べたら普通っぽい内容だけど!

「おーおー、めちゃくちゃ気になりますナ!」

「……直枝さんはこんなにも人気があるにもかかわらず、普段はそういった話を聞きませんし良い機会かもしれません」

「ふむ、理樹君は果たして男と女どちらが好きなのか気になるところだ」

「そこから!?」

「好きな人は…」

「「「「「うんうん」」」」」

 正直、別にいない……って言いたいけど。

 

――キラキラキラ!

 

 うわっ、みんなの期待のこもった目が僕に集中してるっ!

 ど、どうしよう…。

 言えという雰囲気が出来ちゃってるよ。

 ここでいないって言っても、無理矢理根掘り葉掘り聞き出そうとされる気がするし…。

 困ったなあ。

 恭介に助け舟を出してもらいたいところだけど……どうしよう。

 僕は横に座る恭介の方を見た。

 恭介なら上手く話をそらしてくれるはずだ。

「んっ?」

「実はさ、恭介」

 

 僕が恭介の名前を呼んだ瞬間だった!

「だはぁっ!?」

 恭介が真っ赤になって仰け反った!!

「ふえええええぇぇぇぇーーーっ!? じ、じじじ、実は恭介くんだったのーっ!?」

 さらに顔を真っ赤にして飛び上がる小毬さん!

「わ、わ、わ、わふーーーっ!! しょ、衝撃の告白なのですーっ!!」

 クドなんてムンクの叫びみたいになってしまっている!

「り、り、理樹が馬鹿兄貴に、ば、馬鹿兄貴に……」

――よろよろ、こてん

「とら、とられたっ!?」

 よろめいた後に倒れこむ鈴!

「いったいみんな何を……」

「まさかの大胆告白だな…こんなこともあろうかと、今日はコレを持ってきておいて良かった」

 来ヶ谷さんの手にはいつの間にやらボイスレコーダが握られている!

「では、ポチッと」

 

――ザザッ……

 『好きな人は………………実はさ、恭介』

 

「「「「「きゃぁ~~~~~~~~~~~んっ♪♪♪」」」」」

 女性陣から黄色い声!

「え…え、ええええええぇぇぇぇぇーーーっ!?」

 そ、そうだ!!

 僕はあのとき『好きな人は…』で言葉を止めてたから、それとつながっちゃったんだ!!

「ちっ、違うんだよーっ! こっ、こっ、これは」

「ほう…違うのか。ポチっと」

 『好きな人は………………実はさ、恭介』

「「「「「きゃぁーーーーーーんっ♪♪♪」」」」」

「うわわわわわわぁぁぁーーーっ!! や、やめて、やめてよーっ!」

 来ヶ谷さんからボイスレコーダーを取ろうとしたけどヒョイと避けられた!

「きょ、恭介!」

 そうだ、恭介ならこの状況を打破してくれる!

 恭介の方を見ると。

「り、理樹……」

 恭介は耳まで真っ赤になっていた!!

「り、理樹…お、おまえの気持ちは正直嬉しい。けどな、俺たち…男同士なんだぞ?」

「そんなことわかってるからーっ!!」

「……わかった上での告白とは、直枝さんのその勇気には感服です」

「ブフーーーッ!?」

「理樹、恭介…幸せになってくれ!!」

 涙を浮かべ手を差し伸べてくる謙吾!

「恭介っ! 理樹がここまで勇気振り絞って告ったんだから、絶対に幸せにしろよっ!」

 真人なんてニカッと笑って恭介の背をバンバン叩いている!

「ぼ、僕は告白したわけじゃなくて――」

「理樹君」

――ぴとっ

 僕の口に小毬さんの人差し指がつけられた!

「言った後に恥かしくて取り消しちゃいたくなる気持ちはわかるよ」

「けどね、せっかくがんばったんだよ? それをなかったことにしちゃったら…もったいないよね」

 慈愛に満ちた小毬さんの顔が今の僕には鬼に見える!!

「ぼぼぼぼぼぼぼ僕はだからっ」

「――理樹、おまえの気持ちはしっかりと受け取った」

 ぎゅっ!

 恭介が僕の正面に回り、両手で僕の肩を押さえた!

「ひっ!?」

 

「「「「「……………………」」」」」

 なぜか静まり返る部屋!

 

「おまえらも聞いてくれ!」

「ここに宣言するっ!!」

 肩に置かれた手に余計に力が入れられた!

「理樹」

「俺は、おまえを……」

 恭介の真剣なまでの眼差しが僕を射抜いた!

 

「一生愛すっ!!」

「ブフーーーーッ!?!?」

 

「「「「「んきゃぁ~~~~~~~~~んっ♪♪♪」」」」」

 女性陣が赤くなったホッペタを押さえて一斉に飛び上がった!

「きょきょきょきょ、恭介ぇーっ!?!?」

「大丈夫だ! 今まで俺たちはいろいろな困難を乗り越えてきた!」

「性別ぐらい楽勝だろ?」

「いやいやいやいやいやいや!! 僕の話を聞いてよぉぉぉーーーっ!!」

「はははっ、愛のささやきなら後でゆっくりと聞いてやるよ…」

「二人っきりの時にな……」

「ひやーっ! 甘いセリフきましたネ! ヨッ、新婚さんっ!」

「よせよ、照れるじゃないか」

「照れるとかじゃなくてっ!! ま、真人、謙吾、助けてよーっ!」

「へっ…俺たちが割ってはいるのは野暮って奴だろ、な、謙吾」

「ああ…幸せを掴めよ、おまえら」

「つかめないからぁぁぁーーーっ!!」

「妹として複雑な気分だ…」

「大丈夫だ鈴。すぐに慣れるさ」

「なら安心だ」

「そこ慣れちゃ終わりだからぁぁぁぁっ!!」

「理樹君、恭介さん、結婚式はみんなで盛り上げるからねーっ」

「当たり前だろ、小毬。俺たちの結婚式はみんながあせるぐらい盛大だぜ? な、理樹!」

「けけけけけ結婚なんてしないってばぁぁぁーーーっ!」

「ははっ、理樹のは・ず・か・し・が・り・屋・さん・めっ」

「……初めて見ました。そう言いながらデコピンをするバカップルは」

 

「だから、僕の話を聞いてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

 こうして今日もリトルバスターズの一日が過ぎていった…。