「――よし、全員揃ったな」
夜の学食を見渡す恭介。
「はいっ、恭介さん、質問ですっ」
「何だ、小毬」
「私なんで集まったのか聞いてないのです」
「……また突拍子もないことを思いついたのでしょう」
「まあ、それに関しては今理樹から説明がある」
「ふえ? 理樹くんから?」
今、学食にはいつものリトルバスターズのメンバー――正確には僕の妹、理姫を除いたメンバーが学食に集結している。
「ん? 理姫がまだだぞ」
鈴が不思議そうにキョロキョロしている。
「うん、それなんだけど…今日は理姫は呼んでないんだ」
「なにぃ?」
「珍しいじゃねぇか、おまえが理姫を呼ばねぇなんて」
「あはは…今日はその理姫の話なんだ」
みんなのハテナの目が僕に向けられた。
「実は――」
「理樹、ちょっと待て」
話をしようとした途端、恭介に止められた。
恭介を見るといつものように胸元から巻物が。
「やっぱりこいつがないと盛り上がらないだろ?」
わざわざいつもの横断幕まで用意してくれたらしい。
「俺がこっち端持ってるから」
「じゃぁ…」
僕はいつも恭介がやっているように、ダーッとその巻物を広げた。
「だ、第一回、理姫のサプライズ誕生日パーティーをしよう~」
「えーっと…はい、拍手~」
――パチパチパチパチ~~~ッ!
僕がいった瞬間、大きな拍手が巻き起こった!
「わふーっ、そういえばそろそろ理姫さんのお誕生日でしたーっ」
「さすが理樹君っ。理姫ちゃんの誕生日を盛り上げる計画だね~」
小毬さんの目がキラキラと輝いている。
「うん、そうしてあげたいと思って」
理姫の喜ぶ顔を思い浮かべると、どうしても顔が緩んでしまう。
「うわぁー、見て見てこの理樹くんの緩んだ顔! このシスコン! そういえばシスコーンってお菓子ありますよネ」
相変わらず葉留佳さんの話は突拍子がない。
「……禁断の愛の始まりでしょうか……ぽ」
「なるほど。つまり今回の作戦は理姫女史を妹から恋人にしようという作戦だな」
「全然違うからぁーっ!!」
なんで西園さんと来ヶ谷さんはいつもそういう発想に行き着くんだっ!
「ちきしょーっ!! オレも理樹の妹になりてぇーっ!!」
「待て真人、貴様より俺の方が妹属性とは思わないか?」
「んだと謙吾! オレの方が妹属性だぜっ!」
この二人はそっとしておこう……。
――今回は理姫が僕の妹になってからの初めての誕生日。
僕が、リトルバスターズが理姫の誕生日を祝う初めての日だ。
一ヶ月前に誕生日の話題が出た。
『お兄ちゃんには覚えていてほしいな』
『忘れるわけないよ』
『ふふっ、今から楽しみにしてていい?』
『うん』
あの時の理姫の顔は、幸せをいっぱいに表現していた。
「――ところで、さぷらいずって何をやるんだ?」
小首をかしげる鈴。
「ベタだとは思ったけど、理姫の誕生日を忘れたフリをして、さり気なくパーティー会場に誘導してビックリさせよう、って作戦」
「どうかな?」
「はい、そのベタさがリキっぽいかと思いますっ」
「ベタだな。王道、定番とも言うが理姫女史ならば引っかかるだろうな」
「……かなりベタだとは思いますが、天然の理姫さんにはちょうど良いサプライズかもしれませんね」
「あはははベタベター!」
ベタだとは思ったけど、そこまで言われると傷つくなぁ。
「ふえぇ、理樹君、私たちは何をすればいいの?」
「うん、それなんだけど――」