SSブログ TJ-Novelists

アニメやマンガ、ゲームから妄想したSS(ショートストーリー)を書き綴るブログです。

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84.もう目も見れないよ、優しく笑うたび悲しすぎて(理樹×古式さん)

#シチュ:冬も近づいた季節。夜店が軒を連ねる境内。理樹と古式さんの二人でお出かけです。

 

「――あっ」

古式さんが構えたポイに穴があき、金魚が水中へと逃げる。

「逃げられましたね」

「残念だったね」

「一匹になってしまうより、仲間と一緒にいた方が良かったのでしょう」

言いながら、手に持つポイを店の人に返す。

「もういいの?」

「はい」

金魚すくいのプールの前から立ち上がる彼女は、笑顔だった。

 

――いつからだろう?

彼女と初めて会った時の印象は、笑わない人、だった。

彼女の笑顔が見たい、それが最初の切っ掛けだったんだと思う。

次第に彼女と一緒にいることが多くなった。

今日は何があったとか、リトルバスターズのみんなの話とか、そんななんでもない話ばかりだったけど、彼女は静かに僕の言葉に耳を傾けていた。

そんな日々を続けているうちに、一方通行だった話は会話へと成長していた。

彼女の、今日はこんな本を読みました、魚料理が好きなんです、そんな日常の話を聞くのが何よりの楽しみになっていた。

彼女の笑顔が僕に向けられた日、ようやく気付いた。

 

ああ、僕は古式さんが好きなんだ。

 

 

「――直枝さん、これ、似合ってますか?」

出店に出ているビーズアクセサリーを細い指に通し、僕の方へ手を差し出す。

「うん、シンプルで古式さんらしいよ」

「それは私が地味と言うことですか?」

「え!? あ、いやいやいやっ! そういう意味じゃなくてっ」

「ごめんなさい、冗談です」

クスリと笑う様子が、僕の心を打つ。

 

――いつからだろう?

古式さんは僕の部屋にもよく寄るようになった。

茶菓子のお裾分け、そんな感じのが多かったと思う。

同じ部屋で、話をして、お菓子を食べる。

それだけで僕は嬉しくて溶けてしまいそうだった。

何より、彼女の笑顔が好きだった。

こんな日々が続くと思っていたんだ。

ある日彼女が言った。

「直枝さんだから話すんです」

今でもあの時の声、仕草を鮮明に思い出せる。

「私……宮沢さんのことが好きなんです」

 

 

出店を外れ、夜の境内の裏手へと足を運ぶ。

「――綺麗ですね」

「うん、ここからは街が一望できるんだ」

「直枝さん」

「どうしたの?」

「ほら、上を見てください」

「オリオン座です」

月光を浴び、夜空を見上げる彼女は……綺麗だった。

 

――いつからだろう?

彼女と一緒にいるのがつらくなった。

恋をして綺麗になっていく彼女を見たくないから、もう会いたくない…。

なんて言えない。

だって逢いたいから。

 

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コツリ、と古式さんの頭に僕のおでこをつける。

「直枝さん? どうしたのですか?」

「……少し、このままでいてもいいかな」

「…構いません」

 

もう目も見れない…その瞳に何が映っているのか知るのが怖すぎて。

今この瞬間を彼女といるのは嘘じゃないのに

涙が頬を伝う。

「直枝さん?」

ああ、

何も変わらない、何も届かない。

「あの、直枝さん?」

きっとこれからも…。

 

「な…おえ…さん?」

振り向いた古式さんの大きな瞳が困惑に染まっていた。

「ううん、なんでもない、なんでもないよ」

僕は今、上手く笑えているだろうか?

「そう…ですか」

お願い、そんな悲しそうな顔を見せないで…。

「あ、ほら、そんな悲しそうな顔しないでよ」

「やっぱり笑顔が一番だよっ」

「そうですね」

僕が笑うと、彼女もつられて笑う。

 

彼女があまりに綺麗に笑うものだから、僕は…僕は涙をこらえることが出来なかった。

 

 

以上です!

片思い、本当につらいですよね。

今回は自分の過去を元に、リアリティを出して書いてますw

気持ちを伝えることも出来ず、想いを募らせる片思い。

出会いから恋わずらいまでの過程でございます。

恐らくみなさんもこんな苦い片思いを経験したことがあるのでは?

 

今回の小ネタのアウトフレームは「逢いたいから」という曲と「有心論」からですw