#シチュ:謙吾と古式さんが一緒に待ち合わせをして昼食を食べるようです。
「まずいな…すっかり遅くなってしまった」
古式と待ち合わせしている裏庭のベンチへと急ぐ。
…………。
……。
裏庭のベンチ。
そこにはすでに古式が腰を掛けていた。
俺を見つけると、古式は薄く微笑を浮かべながら小さく頭を下げた。
「――すまない、待たせてしまったな」
「私もたった今着いたばかりです」
そう話す古式の頭には一枚、落ち葉が乗っかっていた。
落ち葉を手に取り落とす。
「あ…」
「悪かった。ずいぶんと待たせてしまった」
「いえ、その葉は私が化け狐の真似事をしていただけです」
日本人形のような顔に微笑みが浮かぶ。
いつもながら素っ頓狂な冗談だ。
計算なのか天然なのかわからない…たしか、西園あたりがそんなことを言っていたっけな。
「横、いいか?」
「はい」
ベンチの上、古式が敷いたハンカチの上に腰を下ろす。
「宮沢さん」
横に置いてあった弁当箱のうち、大きめの方が俺に差し出される。
「こちらを召し上がりください」
「古式…昨日も言ったが、弁当なんか作ってこなくていい」
無論、俺の手には購買の袋がある。
「いいえ、毎日そのような物ばかり食していたらお体に障ります」
「しかしだな…」
「それに」
言葉を区切り微笑む。
「宮沢さんに尽くすことが、私の生きがいです」
「むぅ…」
さっきと同様に冗談なのだろうが…。
そんなことを言われても…どう対応していいのかわからん。
恥かしさを隠すかのように弁当箱の蓋を開ける。
「――ほう、随分と手が込んでいるな」
「そうでもありません」
弁当箱には海苔が敷かれたご飯、程よい焼き加減のシャケ、和え物にぬか漬けと、一見して手が込んでいるのが分かる。
「ぬか漬けか」
「はい、私が漬けたんですよ。宮沢さんのお口にあえばいいのですが…」
「どれ…」
古式がじっと俺の方を見つめる中、一口、口に運ぶ。
「どうですか?」
「ああ、これは美味い」
「よかった…」
俺が食べ始めると、ようやく古式も弁当箱を開け食べ始めた。
「――なあ、古式」
「はい、なんでしょう?」
「……趣味はできたか?」
「先程も言いましたが、貴方に尽すことです。貴方が望むのでしたらどのようなことでもしてあげたいと思っています」
「はっ!? いや…ブハッ!? ゴホッゴホッ!!」
突然の発言に咽てしまった。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈…ゴホッ、大丈夫だ」
背中を叩いてもらい、気を落ち着ける。
「そ、それは趣味じゃないだろう」
「すみません、少し宮沢さんに意地悪をしたくなってしまいまして」
悪意のかけらも見えない微笑が俺を見上げている。
「そうか、それはしてやられたな」
「話を戻しますと、最近は読書に没頭しております」
「西園さんが貸してくださって、それ以来読むようになりました」
「読書か、いい趣味だ。どんな本を読むんだ」
「薄くてとても読みやすい本です」
「冬休みに西園さんとご一緒して、同じ種類の本を買いに行く約束までしてしまったくらいです」
「ほう、随分と本格的にハマっているじゃないか」
「はい」
ついに古式にも打ち込める趣味ができたのか。
後で、西園にも礼を言わねばな。
はい、以上です!
謙吾と古式さんの日常風景w
こんな奥ゆかしい人がいたら、一度お目にかかってみたいですw
そして!
謙吾、本当に安心していいのかっ!?(爆