#シチュ:ここは保健室。眠ってしまった理樹を介抱する謙吾だったが、起きた理樹は……なぜか猫化していた。
「……みゃ……」
「ん? 理樹、目が覚めたか?」
今は放課後で、ここは保健室だ。
今俺は眠ってしまった理樹を運んできて、ベッドの横にある丸椅子に腰を掛けたところだ。
どうやらベッドに寝せた理樹がもう目を覚ましたようだ。
「みゃう?」
目をパチクリさせる理樹。
「どうしたんだ、そんな顔をして?」
「ふみゃ?」
どうにも様子がおかしい。
「……熱でもあるのか?」
理樹のおでこに触ろうと手を伸ばす。
「みゃっ」
――かぷ。
「かぷ?」
指を見ると。
「みゃみゃ♪」
理樹が俺の指に嬉しそうに噛み付いていた!
「なっ、ななななななな、なにをするんだ理樹っ!?」
「にゃんにゃん、かぷかぷ♪ はむはむ♪」
理樹の歯と唇の感触が指先に直に感じる。
痛くはない、むしろ気持ちいい…でででではなくだな!!
な、なんなんだ!?
慌てて指を抜く。
「みゃぅ……」
ネコ耳まで垂らしてションボリする理樹。
「す、すまない」
思わずあやまり、また手を差し出す。
「みゃぅーぅ」
今度は手のひらに頬を擦り付けてきた。
目を細め、気持ち良さそうにしている。
まるで猫みたいだな。耳もあるし。
……。
「ネコ耳!?」
理樹の頭を見ると、そこにはなんとネコ耳がついていた!
「みゃー」
そういえば、さっきから理樹は猫声しか発していない。
「まさかおまえ…猫になったのか?」
「みゃ~」
答えの代わりにベッドの上をごろごろする。
猫だと?
これは俺の夢か?
自分の頬をつねる。
「いたいぞ…」
むぅ…全くわけがわからん。
「…………」
気付くと、理樹が俺を見つめていた。
何かを待ちわびてるような顔。
「もしかして……遊んでもらいたいのか?」
「んみゃ」
クリクリとした瞳を俺に向け、そうだと言うように声を出す。
鈴は猫とどう遊んでたっけな?
「たしか…」
悪いことをするわけではないんだが、周りに誰もいないことを確認する。
「むう…………」
――ポン。スススス~
理樹の腹の上に手を置き、ひと撫でしてみた。
「にゃにゃーう~」
間延びした声で、体を伸ばす理樹。
どうやら気持ちよかったらしい。
もうひと撫で。
「にゃう~う~」
「ははは、そんなにくねくねするな」
さらにもうひと撫で。
「にゃにゃなぅ~」
俺の手の動きを堪能するかのように身もだえしている理樹が眼下にいる。
ダメだ…!
ク、クセになりそうだ!
「――みゃっ」
すると、理樹が突然体を起こした。
「うおっ!?」
――すとんっ。
理樹が丸椅子に座っている俺のヒザの上に乗っかった!
「……」
「みゃーみゃー」
「……」
「みゃう?」
今、俺と理樹は超至近距離で向かい合っている状態だ。
無論理樹は俺のヒザの上。
そして。
「みゃうっ!」
「はははっ、よせっ、剣道着の襟に顔を突っ込むなっ、はははっ」
「にゃおぅ~」
「ははははっ、こら理樹ー」
猫は袋とかこういう場所に顔を突っ込むのが好きだったな、そういえば。
だが…。
もしこの保健室に誰か来たら、非常にとんでもない勘違いをされてしまうことは想像に難くな――。
――ガラガラ。
「――ソフトボールの最中にヒザをすりむいてしまっ…………――」
突然入ってきた笹瀬川と目が合った。
笹瀬川は大きな瞳をもっと大きく見開いて、こちらを凝視――もとい固まってしまった!
呼吸を忘れているほど凍り付いているぞ!?
「……」
「……き、聞いてくれ」
「……」
「……おまえはきっと大きな勘違いをしている」
「……」
「……理樹はな、実は猫だ」
そう言うのと同時に、
「ん~♪ ん~♪」
理樹が嬉しそうにお尻を振った。
――ガラガラ、ピシャッ。
『うああああああああああああああぁぁぁぁぁん!!』
『佐々美様っ、どうなされたのですかっ!?』
『恋した相手が、相手が、まさかホ、ホ、ホ…うああああああああぁぁぁぁーーーん』
『佐々美様っ、お待ちくださいーーーっ!』