SSブログ TJ-Novelists

アニメやマンガ、ゲームから妄想したSS(ショートストーリー)を書き綴るブログです。

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180.涼宮ハルヒの泥酔【ハルヒSS】

180.涼宮ハルヒの泥酔【ハルヒSS】

 

 

 

 #『涼宮ハルヒの泥酔』

 #シチュ:今日はキョンの家でお泊り会ですw

 

 

――後悔先に立たずとはよく言ったもんだ。

 ああ、そうだよ。

 たった一言。口が滑ったことが問題だったんだ。

 ウチの両親と妹が旅行でいない、ってハルヒの奴にな。

 

 チャイムの音にドアをあけるといつもの面々が重そうな荷物を手にして立っていた。

「おっ邪魔しまーすっ!」

「キョン君、お邪魔しますね」

「――ただいま」

「あなたの家に泊まれるとは心躍ります」

 

 やたら元気なハルヒと、麗しの令嬢こと朝比奈さん、何か勘違いをしている長門の声が俺の家に響く。古泉、おまえはとっとと帰れ。

――今日はハルヒの『今日はキョンの家でお泊り会を開くわよ!』の一言で全員俺の家に集合してしまったのだ。

 目を輝かして計画を練っているハルヒを止められるわけもなく、今に至るという訳だ。

 

「今日は誰もいないから俺の部屋じゃなくて居間を使っていいぞ」

「さっすがキョン! ま、最初からそのつもりだったけどね」

 もちろん俺だって諦め済みだ。

「ふぅ…さすがにこの量の荷物は堪えますね」

 ドサッとテーブルの上に買い物袋とエコバッグを置く面々。

「こんなに何を買ってきたんだ?」

「ンフフ……そんなに見たい?」

 ニヤニヤしたハルヒがズイと俺に顔を近づけてきた。

 別に、といっても無駄なんだろうよ。

「なんだよ?」

「キョンがそんなに見たいっていうなら仕方ないわねえ。まずはみくるちゃんの方から」

「えーっと、この袋の中はきのこの山にたけのこの里、ポテトチップスに…それにカントリーマアムです」

 お菓子パーティーでも開こうとでもいうんじゃないですよね?

「次、有希!」

「――スルメにサケトバ、イカソーメン他各種乾物」

「急にラインナップがおっさん染みたな…」

「最後はこーれ。ジャジャジャーーーン!」

 ハルヒが嬉しそうにエコバッグを開け、次々と銀色の筒やらビンを取り出し始めた。

「チュウハイでしょ、ウメシュでしょ、純米酒に焼酎。あ、もちろん割るためのお茶もソフトドリンクも買ってるわよ」

「そして、メインはこれ!」

「…取り合えず聞くが、なんだよその赤いのは?」

「解禁されたばかりのボジョレヌーボーに決まってるじゃない!」

「ペットボトルになってるのが惜しまれるわね!」

 って!!

「なに買ってんだよ、おまえは!!」

「大丈夫よ、安心しなさい」

 もしかして全部酒に見えるが、実はソフトドリンクだったというオチか?

「キョンがどれを飲みたいかわからないから、メジャーな種類を揃えておいたわ」

「そっちじゃねぇよっ!! 俺たちはまだ未成年者だ!」

「なによ、そんなこと?」

「江戸時代なんて15歳くらいから杯かわしてるのよ? 江戸だったらこんなの当たり前よ」

 江戸時代と現代日本を一緒にするな。

「おい古泉。どうしてとめなかったんだよ」

「高校生が夜に集まってコソコソと悪さをする。UMAやネッシーを追い回すよりよほど高校生らしいじゃないですか」

 イエスマンのこいつに何を言っても無駄だったな…。

 何気なく目線を長門に移すと。

「――大丈夫。バレなければ問題ない。バレる確率は限りなくゼロに近い」

 普通の高校生のようなことを言うようになったな。って感心できるか!

 肩を落とし、最後に朝比奈さんに目を向ける。

「私は飲んでも大丈夫な年……ひゃぅ!? き、き、禁則事項ですっ!!」

 今、一瞬聞いてはいけないような言葉を聞いてしまったような……。

「そんな細かいこと気にしてるとハゲるわよ、キョン!」

「もう買っちゃったんだし、楽しまなきゃ損よ、損!」

 ズラリと並んだ酒の数々とやたらと嬉しそうなハルヒの顔を見比べる。

 他の面々も既に床に腰を下ろし、テーブルにお菓子の準備をしている。

 はぁ…。

「ま、それもそうだな」

「それじゃ……」

 

「「「「「かんぱーーーいっ」」」」」

 

 ………………

 …………

 ……

 

――それから3時間。

「なんじゃこりゃ……」

 この光景をなんて表現したらいいんだろうな?

 壮絶、その一言か。

 まず朝比奈さん。

「……きゅ~~~~っ……」

 すでにソファの上でのびている。

 案の定お酒には弱かったようだ。一杯目で赤くなり、二杯目で目がトロンとさせながら微笑みだした後、三杯目でソファに呼ばれそのままノックアウトだ。

 ホロ酔い時の顔は可愛らしかったが、このままそっとして置いてあげよう。

 次、古泉。

 いつもの数倍気色悪い笑みを顔に貼り付けた古泉が、ふらつく足でテレビの上に何かをセットしていた。

「おい古泉、おまえは何をやっているんだ?」

「おや、ばれてしまいましたか」

 目の前でやっているんだ。ばれるもばれないもないだろ。

「これです」

 テレビの上には写真立てが置かれていた。

「僕のセミヌード写真です」

「ブハァッ!?」

「テレビを見るたびに僕のことを思い出せるようにという、ちょっとした心配り(こころくばり)です」

「もしやお気に召しませんか?」

「当たり前だ!!」

「そうですか。あ……なるほど、僕としたことが配慮が足りず申し訳ありません」

「ヘアヌードの方が良かったですね」

「そんなんいるかぁぁぁぁーーーっ!!」

 次、長門。

「……あの、長門さん? 何をしていらっしゃるのでしょうか…?」

「――くぴくぴくぴ……お酒をのんでいる」

 長門は、まるで赤ちゃんが哺乳瓶を咥えるかのように小さな両手で一升瓶を挟みクピクピとそのまま飲んでいやがった。

「――問題なひ。この程度で私を酔わすことは不可みょう」

 完全に酔っ払っていた。

「――おさけ、おいしい」

 普段は文学少女をしている女子高生がセーラー服で床に女の子座りしながら一升瓶をチューチュー吸っている様子を思い浮かべて欲しい。

 シュールだろ?

「おまえ、飲みすぎな……うおっ!?」

 今まで長門の影になって見えなかったが、後ろには数本一升瓶が転がっていた!

「買い物袋にはこんなに入ってなかったぞ!? いったいどこから持ってきたんだ!?」

「――統合思念体に都合してもらった」

「――安心して。統合思念体がツケを払ってくれる」

 統合思念体とやらはツケまで払ってくれるのか…随分と便利な宇宙機関だな、オイ。

 

 最後はハルヒだ。

「……」

 ハルヒは絨毯の敷かれた床に腰を下ろし、ソファの下部に背を預けて缶チュウハイを傾けている。

 ちなみに俺もハルヒの横に座っている。

 ……どうしてこんな配置になったのかは覚えてないが、俺の肩にたまにハルヒの肩が当たるほど近い。

「おい、ハルヒ」

「どうしたのよ、キョン? 新しいお酒とる?」

「いや、まだいいが…」

 頬を程よく桜色に染めたハルヒが、俺の方を見て嬉しそうに微笑む。

 普段からは想像できないほど静かだぞ。

 いや、そんなことより妙に可愛らしいというか……って、何変なことを思ってるんだ、俺!

 そう思いながら二人で肩を並べ缶を傾けていた。

「ねぇ、キョン」

 ハルヒのどこか鼻に掛かったような甘え声。

 どうした、と言う前に。

 

――コテン。

 

 横に座るハルヒの頭が俺の肩に乗っていた。

 乗っていた…?

「少しだけこうさせて」

「…………へ?」

 な、なななな……!!

 なにぃぃぃぃぃーーーっ!?

 いつもは「近寄るんじゃないわよ、バカ!!」とか「唯一絶対のこの涼宮ハルヒ様に意見しようなんて一千万年早いわ!!」とか言ってくるあのハルヒが!!

 あのハルヒが!!

 俺の肩にコテンと頭を乗せている!!

「……ハ、ハルヒさん…?」

「はあ、キョンの肩って落ち着くわね」

 なんか俺の肩でまったりしていらっしゃるーっ!!

 乗せた頭をくりくりと動かして吐息を吐くハルヒ。

 なんだこれは!?

 いやまて。聞いたことがあるぞ…。

 世の中には飲むと急に寂しい気分に襲われ、甘えたくなってしまうタイプがいるとか言う話を!

 まさかハルヒがそれだと言うのか…!?

「……」

 スッと寄りかかっていたハルヒが俺から離れた。

 ……。

 ふぅ~。

 そんなわけなかったな――。

「キョン」

「ひざまくらして欲しいんだけど」

「ブフーーーーーーッ!?!?」

 

――コテンっ!

 

「キョンっ」

 待てと言う前に問答無用で俺のヒザに寝転んできやがったっ!

「キョンのひざまくら……ん~~~っ」

「お、おいこらっ! 俺の太ももにホッペをスリスリするなっ!」

「ホントにホントにキョンのひざまくらなんだ…」

「そうだよ、俺だよっ! そんなこといいから頭を上げろっ」

「キョンっ、キョンっ」

 今度は嬉しそうに俺のヒザに頭を乗せて甘えだした!

「キョンっ」

 今度はハルヒが中に手を向けパタパタとしだした!

「今度はなんだよっ!」

 そのパタパタしている手を押さえると。

「手が寂しいの」

「このまま握ってて……いい?」

 ウルウルと潤んだ瞳で上目づかいだと!?

 くそっ!!

 な……。

 なんて可愛いんだっ、このやろうっ!

「だめ…?」

「い、いいぞ」

 こんなハルヒの甘えんぼ顔を見せられて、断れる奴がいたらここに呼んでこい!

「♪」

 ハルヒが俺の手をキュッと握り締め、まるで子猫のように俺のヒザにほっぺたをすりつけているっ!!

 あのハルヒがこんなになっちまうなんて……。

 酒って怖い!!

「おっと、涼宮さんばかりズルいじゃないですか? もちろん僕もいいですよね?」

 って、古泉!? おまえは近づいて来るな!!

 何対抗意識燃やしているんだよおまえは!!

「――私もあなたと接触したい。頭上に座らせてくれることを希望する」

「それ、無理!」

 長門! おまえは自分で酔ってないと思ってるけどベロンベロンだからな!

 言ってることなんてムチャクチャだからな!!

「――問題なひ」

「――バランスを取る自信はある」

 そこじゃないだろ!!

「うぷ……キョン君、私、なんか頭がグワングワンして……うぷ」

「へ!? 朝比奈さん、ちょっと待ってください! 今俺がトイレに――」

「ちょっとキョンっ! 私から離れちゃだめーーーっ!」

「うおっ、ハルヒ離せっ、朝比奈さんが緊急事態なんだっ!!」

「うぷっ…もう、ダメ……」

「朝比奈さんっ!? もう少し我慢をうあああああああぁぁぁぁぁ~~~~~~………………――――」

 

――後悔先に立たずとはよく言ったもんだ。