#シチュ:また恭介が何かに影響されてしまったようです。
「わふー…今回は全くもってダメダメです~…」
「クーちゃん、元気だして? 私なんて全教科合計で…はぅ~…ぐったり~」
「こまりちゃん! し、死ぬなっ!」
――3月に入ったとある放課後。
僕たちのいる学食はどんよりとした雰囲気に包まれてしまっていた。
原因は……学年末の試験だ。
ついつい遊びを優先してしまっていた僕らの結果は惨憺たるものだった。
「はぁ…」
僕も世界史の点数はちょっと人には見せられそうにない。
「私なんてこの点数をお姉ちゃんに見られたら、二人きりの缶詰秘密特訓ががががーっ!」
「……三枝さんもみなさんも元気を出してください」
「いいよね、みおちんはさー。頭良くてズルイですヨ」
「……『文学少女は頭がいい』ですか」
パタリと本を閉じる西園さん。
「……その幻想をぶち壊して悪いのですが」
「……数学が赤点ですが、何か?」
うわ、西園さんにもそんな苦手教科があったんだ。
「んだよ、おめーら。テストの点数なんて気にしてっから筋肉少ねぇんだっつーの」
「真人はテストの点数を気にしようよ…」
「全くだ。少しは筋肉以外にも目を向けてみてはどうだ?」
「悪ぃがな」
腕を組んでにやりと口元を緩ませた。
「オレは100点だったぜ!」
「全教科合計でしょ、それ」
「さすが真人少年だな。その点数はそう取れるものではないぞ」
「へへっ、だろ?」
「こいつバカだっ」
なんでそこまで誇らしげな顔が出来るんだろう。
「――おまえらが置かれた状況は大体わかった」
今までテーブルの端でライトノベルを読んでいた恭介が顔を上げた。
恭介のあの顔。また何かを思いついた顔だ。
「うわぁ~ん恭介さん、どうしよう~っ」
「私もこのままではオチオチ里帰りもできません…」
「馬鹿兄貴、あたしもびっくりした。ズタボロだった。どーしたらいいんだ?」
「わかったわかった」
「今回のテストの点数が悪かったのは、俺が雪山ペンション火曜サスペンス祭りやら人力ソリ大会なんてのを開催したせいでもあるからな」
キラリとその目が輝いた。
「俺が責任をもっておまえらの点数を上げてやる」
「いいの、恭介? そんなこと言って」
「当たり前だ。リーダーとしてそれくらいの責任をとらないとな」
言いながら恭介が見慣れた巻物を胸元から出した。
「理樹、ちょっとそっち持って」
「あ、うん」
それをだー、と走って広げる。
「全校対決・みんなDEバトルランキング優勝は誰だ大会~」
「はい拍手~」
…ぱらぱらと拍手が上がる。
「ヒャッホウ!」
「うおぉぉぉーっ!! 筋肉さんが強敵(とも)を求めて唸ってやがるぜ!!」
飛び上がるほどテンションが高いのが二名。
「……先ほどまでのテストの話と全くつながりが見えないのですが…」
「全校ってことは、もしかして僕たちだけじゃなく、他の生徒も巻き込むってこと?」
「そうあせるな。今から説明をする」
恭介がコホンと咳払いをする。
「前にやったランキングバトルは覚えているか?」
「あれだろ? 熱いバトルをして負けた奴には称号つけるってヤツだろ?」
「あの真人が勝負勝負ってくちゃくちゃうるさかったヤツか」
「まあ、趣旨は前回やったそれと大体同じだ」
「今回はそれに手を加える」
手元にあったライトノベルをペラペラとめくって頷いている。
よくタイトルが見えないけど『真人とテスト…』かな?
そんなことが書いてある。
また、影響を受けたんだろうなぁ。
「まずはバトルを始める前に、おまえたちには制限時間4分でクイズをやってもらう」
「クイズですか?」
小首をかしげるクド。
バトルとクイズか。何の関係があるんだろう?
「今回はそのクイズのスコアでおまえらの力が変わる。つまり点数がよければよいほど強く、悪ければ悪いほど弱い」
「そういうことか」
「わかったの、来ヶ谷さん?」
「優勝したかったらいい点数を取れ、ということだよ。少年」
「って、ちょっと待ったぁぁぁーーーっ」
真人が吠えた。
さっきまでの自信満々の顔が嘘みたいだ。
今は驚いたチワワみたいになっちゃっている。
「なんだ真人、質問か?」
「さっきのはハッタリでよ…実はオレ馬鹿なんだよ…勝てるわけねぇじゃねぇか」
「ぶっちゃけなくてもみんな知ってるからな」
横でさらに葉留佳さんが困ったように頭をかいた。
「けどですネ、それだと私たちじゃ姉御や恭介くんに歯が立ちませんヨ」
「たしかにそうだよね」
どう考えても来ヶ谷さんの点数を超えれる気もしないし。
「安心しろ。その辺も考えてある」
そう言いながら恭介が僕たちに数枚のカードを渡し始めた。
「なにこれ?」
「それはバトルで使う『技カード』だ」
「ふえぇ?」
「今まではギャラリーに武器を投げ入れてもらって一つだけ選んでいたが、今回はその技カードでデッキを組んでもらう」
「デッキってなんだ?」
「まぁ、カードの集まりってとこだな」
「バトルの各ターンごとにそのデッキの中からランダムで1枚のカードを引いて、それに書かれた技を出すんだ」
なるほど。
色々な技カードを集めて、それで上手にデッキを組むことで成績が上の人にも勝てるということだ。
「……『攻撃カード』や『補助カード』、『トラップカード』なんというものもあるのですね」
「そうだ」
「普通の攻撃以外に、自分をパワーアップするカードや相手のパワーをダウンさせるカード、一定条件が揃わないと発動しないカードや罠を仕掛けたりもできる」
来ヶ谷さんがカードを見ながら眉をしかめた。
「恭介氏、いいか?」
「なんだ?」
「強化系やら操作系やら見たことがある文字が見えるのだが」
「無論パクリだ」
うわっ、言い切っちゃったよ!
「なんだこれ? ゲイ?ボルク?」
真人は真人でキラキラ光ったカードを裏返したりしながら見ていた。
「やったじゃないか真人。それはレアカードだ」
「俺には無限の剣製とやらが来ているぞ」
「……恭介さん、それはもしや」
「無論パクリだ」
言い切っちゃったよっ!
「こまりちゃんにもキラキラカードがあるな」
「ふえ? ザ・ワールドだって。なんだろ?」
「小毬はラッキーだな。それは世界を統べる能力だ」
「ほえぇっ! す、すごいのもらっちゃったよ」
「おまえら、小毬が『ザ・ワールド』っていったら止まってやれよ。だるまさんがころんだの要領だ」
「僕のところには脱衣ってカードが着てるんだけど」
「お、理樹にそのカードが行ったか。詳しいことは説明欄に書いてある」
「えーっと…『理樹はこれを引いたら脱ぐ』って無理!!」
しかも僕指定だ!
「と、いうわけで説明はこれくらいだ」
「カードに関しては売店で買えるように俺から頼んでおく」
周りを見渡すと、もうみんなやる気になっている。
あ。
早速真人が鈴の回し蹴りをくらってる。
それにしても。
さすが恭介だ。
勉強があっという間に遊びになってしまった。
「あ、ひとつ言い忘れていた」
「?」
「今回のランキングはタイトルの通り全校を巻き込んでやるからな。よろしく」
「「「ええええーーーーっ!?」」」
以上ですw
まぁ、こんな感じのゲームですw