#佳奈多とクドの部屋に葉留佳が遊びに来ていました。
――夜の長雨。
こんな日に一人でいるのはつらい。
また一人きりに戻ってしまうのではないかと不安に押しつぶされそうになる。
それを知ってか知らずか。
お姉ちゃんに誘われて私はお姉ちゃんとミニ子の部屋へ泊まることになった。
「って、ミニ子もう寝てるじゃん!?」
3人でベッドの上でゴロゴロとしながら会話をしてたんだけど、いつの間にかミニ子が寝落ちしていた。
「もう…」
お姉ちゃんがミニ子に布団を掛けてあげながら呟いた。
「1時過ぎてるから仕様がないわ。私たちもそろそろ寝ましょ」
「えー、夜はまだまだこれからなのにー」
「ブーブー言わない」
「ブーブーっ」
「……」
パチリ。
灯りが、消えた。
「わかりましたー、寝ますよーだ。せっかくお姉ちゃんともっと話せると思ったのに…」
「……」
お姉ちゃんからの返事はなし。
たぶんミニ子の方のベッドに行ったんだ。
……。
不貞腐れて布団に潜り込むと、妙に雨音が強く感じられる。
「…ザーザー」
雨音を呟いてみる。
「……ザーザー」
孤独が溜まってゆく。
不意に布団が上げられた。
「……もっとそっちに寄りなさい。私が入れない」
ピクリと体が反応する。
「……」
私は無言でおねえちゃんを招き入れた。
少しの空間を挟んで二人背中合わせ。
背にうっすらとお姉ちゃんの温かさを感じる。
その温かさに不安は揺らぐ。
「……」
「……」
雨音交じりの静けさ。
しばらくして、お姉ちゃんが私の方に寝返りを打つ音がした。
「…大丈夫」
お姉ちゃんの小さく囁く声が、妙に大きく聞こえた。
私は答えなかった。
変わりに背中越しに手を差し出す。
その手にお姉ちゃんの手が添えられた。
誰よりも私のことを大切に想っている手。
私の…私だけのお姉ちゃん。
私が指を絡めようとすると、向こうから指を絡めてきた。
「…お姉ちゃんの手、あったかいね」
「…葉留佳の手も」
お姉ちゃんのしなやかな指が私の指を挟み込むように弄ぶ。
私の指もなすがまま。
二人でその指の感触を楽しむように何度も絡ませ合わせる。
次第にか細い炎が心の端に灯る。
私はその絡み合う指を解き、お姉ちゃんの方へと向き返った。
「お姉ちゃん…」
「なぁに」
暗闇でもわかるお姉ちゃんの熱っぽい瞳、熱っぽい息遣い。
そんなお姉ちゃんに…包んでもらいたかった。
「お姉ちゃん、さみしいよ…」
つながりを…確かめたかった。
「…おいで」
「…うん」
お姉ちゃんの手が陶器を触るかのように体に回され、そのまま抱き寄せられた。
細くてしなやかな脚が私の脚を求め、束縛するかのように絡みつく。
お姉ちゃんの太ももが擦りつけられ、熱っぽい温かさが直に伝わってくる。
「葉留佳…」
背骨をゆっくりとなぞる指先。
「あなたはもう絶対に一人にさせない…」
熱い瞳が潤みを帯びた。
「……心から愛してるわ、葉留佳」
甘い囁きに溺れそうになる。
「…もう離れないで、お姉ちゃん」
「…私もさ…愛してる」
互いの唇が近づき、燃え広がる熱情に任せお互いの熱を求め合う。
背徳を塗りつぶすかのように、私たちはキスを繰り返す。
私たちは姉妹。
おかしいなんてことは、とうの昔に気付いている。
けど…。
たまらなく好きになってしまっていた。