#シチュ:理樹と小毬は付き合ってまだ一週間。小毬はもうすっかり理樹君にべったりモードw
――抜けるような青空の中をわたがしみたいな雲が漂っている。
屋上には今日もいい風が吹いている。
「理樹君、とっても美味しかったね」
「うん」
僕と小毬さん。
今日も二人で肩を寄せ合って屋上でお弁当だ。
「お弁当も食べ終わったし…」
小毬さんが僕と自分の分のお弁当箱を包み込み、袋にしまう。
それと同時に。
「えへへ~、じゃーんっ」
袋からコアラのマーチが現れた。
「では、お待ちかねのお菓子た~いむっ」
「うわ…お弁当にホットケーキを食べてまだ食べるの?」
「のんのんのん」
「お菓子はね、別腹なのです」
…ホットケーキはお菓子の内には入らないのだろうか。
「今日はね、ちょっと変わった食べ方しようと思うんだ~」
「変わった食べ方?」
「うん~」
――きゅっ
僕が首を捻っていると、隣に座っている小毬さんが両手で僕の左手を抱きしめてきた。
「ふわぁ…理樹君ほわほわ~」
しかも体をよじりながら僕の腕に押し付けてくるし!
「ふえぇ、準備おっけ~だよ」
「いやいや、オッケーって言われても」
小毬さんの両手は僕の腕に回されている。
なら、どうやってお菓子を食べようというんだろう?
「小毬さん、これだと……」
横を見ると。
「えへへ、理樹君あのね」
「?」
「あ~~~んっ」
まるでひな鳥が親鳥にえさをねだるように、小毬さんがパクパクと口を開けていた。
「もしかして、僕が食べさせてあげればいいの?」
「うん~」
「あ~~~ん」
本当にひな鳥みたいだ。
「はぁ、もう……しょうがないなぁ」
こんなに嬉しそうにしてるのに、断るなんて出来ないよね
「――はい、小毬さん」
「ぱくっ……もぐもぐ、こくん」
「ありがと~、理樹君~」
幸せそうな顔で、僕の二の腕に頬をスリスリとしている小毬さん。
ついつい僕の手はそんな小毬さんの頭を撫でてしまう。
「じゃあね…」
「次は理樹君の番だよ」
「えええーっ、僕もやるの!?」
「当前なのです。はい、私の腕にぎゅ~って」
「そこからっ!? って、勝手に僕の手を回さないでよーっ」
「はやく~」
「う…」
付き合いはじめてから、小毬さんがどんどんワガママになっていく気がするけど…。
ついつい許しちゃうんだよね。
――そんなことをしている間に、始業ベル10分前になった。
「小毬さん、そろそろ教室に戻らないと」
「ふえぇ?」
なぜそこでキョトンとするのかがわからない。
「教室に戻らなきゃ」
「ちゅ~」
突然、よくわからない返答が帰って来た。
「え?」
「まだね、ちゅーしてないもん」
「ちゅ~」
「……」
まさか…。
「ちゅーしないと戻らない、ってこと?」
――コクコク
「ここは学校だしそういうことは……」
「ちゅ~、理樹君、ちゅ~、ちゅ~」
口を尖らせて僕を待ってるしっ!!
「いや…ほら、ワガママ言わないで行こうよ」
「……ちゅ~ダメ?」
「うん、悪いけど」
……。
「うわぁ~~~んっ、理樹君がちゅ~してくれない~っ」
――ジタバタジタバターっ!
小毬さんがダダをこね始めたっ!
「いやいやいやっ、駄々こねてもダメだからっ!」
「理樹君がちゅ~してくれないと勉強に身がはいらないのに~っ!」
――ジタバタジター!
ちらっ
――ジタバタバターっ!
「うわぁ~~んっ、私、理樹君パワーがないと一歩も動けない~っ」
――ジタバタ~~~ッ!
ちらりっ
――ジタバターっ!
「ちゅ~したい~っ!」
――ジタバターっ、ちらっ、ジタバタジタバターっ!
…………。
めちゃくちゃ僕の様子を伺いながらジタバタしていた。
「はぁ……わかったよ」
そう言った瞬間、ピタリと動きが止まった。
「ほんとう?」
小毬さんの顔が最高級デザートを見たかのように輝きを放っている。
目からなんて本当にお星様が飛びそうだ。
「うわ~いっ」
「理樹君~」
「小毬さん、とっても可愛いよ」
「ふえぇ……」
嬉しそうに口を向けてくる小毬さんに
僕は優しく、待たせた分だけ長めのキッスをした。