SSブログ TJ-Novelists

アニメやマンガ、ゲームから妄想したSS(ショートストーリー)を書き綴るブログです。

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189.リトバスメンバーが牡蠣を食べるようです【リトルバスターズ】

#シチュ:リトバスメンバー+二木さんで牡蠣を食べるようです。

※キャラ崩壊注意です(ぉ

 

いつものように恭介、謙吾が僕たちの部屋に集まっていた。

「明日だけどな」

恭介の声に、僕は宿題のノートから顔を上げた。

「牡蠣を食おう」

「また随分と急だね……」

「こいつが言い出すことはいつだって急だからな」

と、宿題から顔も上げない謙吾だ。

「いやな、この前就活の帰り道で船のスクリューが壊れて困っている漁師に出会ったんだ」

いつもよくわからないところに就活に行ってると思う。

「運良く機材は持ってたからな、俺がそれを修理した」

「なんで機材持ち歩いてんだよ……」

腹筋中の真人のツッコミもその通りだ。

「さっきその漁師から、今年は牡蠣が大漁だからお礼の意味も込めてもらってほしい、と連絡が来たんだ。もらわないわけにはいかんだろ」

「ほう…牡蠣か」

謙吾が反応した。なんか目が輝いてるような……。

「牡蠣の殻開けで右に出るものがいないと言われているこの俺の技術を見たい…そういうことだな、恭介!!」

どうでもいいスキルきたっ!

「ああ、期待してるぜ、謙吾」

「うわぁあぁあぁ、燃えてきたぁぁぁ!!」

「待てよ謙吾っち……」

ゆらりと真人が立ち上がった。

「オレが開けてやるぜ……素手でな!!」

「なにぃ? ならば俺は左手だけだ!」

「ならオレは指だ!!」

「俺は気だ」

「マジかよ!? ノータッチだと筋肉が活かせねじゃねぇかぁぁぁーっ!!」

「いーやいやいや、二人とも対抗しなくていいからーっ」

「――LINE送信完了と。明日は朝は抜いておけよ? 昼はたっぷりいくぜ」

 

***

 

翌日の土曜日。

暖かい日差しが降り注いでいるなか、いつもの野球をやっているグラウンドで準備が進められていた。

「――神北さんとクドリャフカ、そこにブルーシートを移動して」

「はいなのです~」「りょうかいっ」

「棗さん、西園さんは学食に紙皿とプラコップを用意してあるから持ってきて」

「(チリン)」「……了解です」

「……なぁ恭介よぅ」

「どうした真人?」

「なんで二木のやつがしきってんだ?」

「二木にバーベキューセットが学校にあったら貸してほしいと頼んだんだ。すると『あなた達に任せておくのは危なそうだから私も参加するわ』と言われてな」

「それってよ、実は二木も参加したかっただけじゃねぇのか?」

「いや、無類の牡蠣好きの線もありそうだな」

「そこ! 井ノ原は倉庫からバーベキューセット2セット持ってきて。棗先輩は火起こし担当」

うん。

すごい張り切りようだ。

いつものリトルバスターズの集まりだと、二木さんは風紀委員だけあって誘いにくくて一緒には遊んでいない。

もしかしたら、僕達と一緒に遊びたかったかも……。

「直枝は何をニヤニヤしているの!」

「え!? あ、いや」

「あなたと来ヶ谷さん、宮沢で和室からあの大きなちゃぶ台を持ってきて。テーブルがあったほうが食べやすいわ」

「お姉ちゃんお姉ちゃん、わたしは何したらいいっ?」

「葉留佳はそうね、ジュースを学食の冷蔵庫に入れてあるから持ってきて」

「はいよーっ」

こうして二木さんの指揮のもと、テキパキと準備が進められたのだった。

 

***

 

「「「かんぱーいっ!!」」」

 

ブルーシートに腰を下ろし、大きなちゃぶ台をみんなで囲んでの乾杯だ。

「理樹、これどーやって食べるんだ?」

「ポン酢か醤油が一般的だね」

「わふーっ! 身がふっくらしていますっ! とってもクリーミーなのです~っ」

「……牡蠣は『海のミルク』と呼ばれているくらい栄養価が高いです」

「ほえぇ、そうなんだ~。海のミルクとろっとしてておいしいね」

「小毬君、今の『ミルクとろっと』をもう一度頼む。物欲しそうな顔でだ」

「ゆいちゃん? みるく……とろっと……?」

「エロい……」

来ヶ谷さんは相変わらずダメそうだ。

バーベキューセットの方に目を移すと。

「オレは素手で牡蠣をひっくり返すぜぐわぁぁぁぁ熱っっーーーっ!!!!」

「ふん、俺が手本を見せてやろう。これはそろそろ返してもうわぁぁぁぁ熱っっーーーっ!!!」

「オーケー、そろそろ俺の出番のようじゃないか」

「「恭介!!」」

「秘技……三ノ舞ッッッ!!」

――カカカッ!

「「1度に3つの牡蠣をひっくり返しただとぉぉぉーーー!?」」

普通にトングでひっくり返そうよ……。

 

横に座る二木さんに目を移す。

「……」

牡蠣を見つめていた。

「どうしたの、二木さん?」

「はじめてなのよ、牡蠣」

「え、そうなの?」

てっきり大好きなのかと思った。

「ポン酢で?」

「うん」

まるで猫がルンバを初めて見たような興味深そうな顔で、ポン酢をかけた牡蠣を口に運んだ。

そして……ぱくりっ。

「うッ!?」

「うわーっ、お姉ちゃんヤバイヤバイっ!!」

葉留佳さんが急いでティッシュを差し出した。

あー……。

牡蠣は好き嫌いがはっきり別れる食べ物だけど……どうやら二木さんはダメな方だったみたいだ。

「…………マズイわ、マズイ」

すんごい涙目になっていた。

「お姉ちゃんってば、ハンバーグとかそういう子供っぽい食べ物ばっか好きだもんね」

「……うるさい」

さっきまでスゴイ楽しみにしていたみたいだし、これはちょっと可哀想だ。

「おっと。牡蠣が苦手なヤツもいると思ってな。はまぐりも貰っておいたぜ」

さすが恭介。準備が良かった。

「……はまぐりをいただきます」

「オーケー、今調理してやるから待ってろ」

そこから数分。

「ほらよ、二木」

「ありがとうございます。――へぇぇ、ふーん」

「気に入ったか?」

さっきとは打って変わって、嬉しそうな雰囲気。

二木さんって、すごくわかりやすい。

「そいつははまぐりの酒蒸しだ。日本酒と醤油で味を整えてある。酒といっても加熱でアルコールは飛んでるから安心してくれ」

「……もう少しもらってもいいですか?」

「ああ、はまぐりもかなりの量を貰ってるからいくらでも作ってやるぜ」

 

***

 

牡蠣が食べれない二木さんだったけど、はまぐりの酒蒸しは美味しそうにいくつも食べていた。

相当気に入ったようだ。

けど……。

二木さんの様子がおかしいと気づいたのはそれからしばらく経ってからだった。

 

***

 

開始から2時間、みんな食後のまったりモードに入っていた。

僕もお腹はかなり膨れて、くつろぎモードに入っていた。

 

――こてん。

 

僕の肩に、温かな何かが乗っかってきた。

ふわりとミントの香りが漂う。

なんだろう、と思って首を動かすと……。

 

「ふ、二木さんっ!?」

ふ、ふ、二木さんの頭が、僕の肩にこてんって、こてんって乗っかっているっ!?

「な~お~え~」

しかも、声がすごく甘えたような甘い声になっているっ!!

「かた、借りちゃったわ……なおえのかた~ふふふ」

…………。

……。

「えええええええーーーーーーっ!?」

二木さんが甘えん坊になってるよっ!?

「きょ、恭介これって!?」

「……はまぐりの酒蒸しだが……もしかしたら調理が甘かったかもしれん」

「えええええーっ!? も、もしかして二木さん、酔ってるの!?」

そう言ってるそばから、

「なおえ、手。んっ」

二木さんが僕の方にピンと手を伸ばしてきていた。

「え、えと……手?」

「そ。手」

「えと……手がどうしたの?」

「手がさみしいの。さわって」

なんかスゴイことになっていた!!

「二木は普段抑制されているせいか、飲むと甘えん坊になるタイプのようだな」

「恭介はそういう分析いいからーっ」

まわりに助けを求めようと目を上げると、

「佳奈多さん、かわいいのですーーーっ!」

みんなの目からキラキラとお星様が飛んでいた!

「わわ、私も佳奈多さんのお隣に移動しても、よっ、よろしいでしょうかっ?」

言うやいなやそそくさと二木さんの横に移動したクド。

すると……

「いらっしゃい、クドリャフカぁ♪」

――ぎゅっ

クドが近づくと直ぐに、二木さんが後ろに回りこんで、ぎゅっと抱きしめていた!

「クドリャフカは後ろからぎゅってするのが一番きもちいいの」

「佳奈多さん~、わふっ、ほっぺスリスリがくすぐったいのです、もっとしてください」

「クドリャフカぁ♪ う~んクドリャフカやわらかい~」

「もっともっとぎゅってして欲しいのです」

ここぞとばかりに要求を出しているのは気のせいかな!?

「もっともっと? こう? こうかしら? ふふふ、これでどう?」

「ふやぁ~……佳奈多さんにこんなにされて、とっても幸せなのですぅ~」

なぜかクドも顔を赤らめながら二木さんのされるがままになってるし!

目もうっとりしちゃっているのは気のせいかな!?

「……こ、これは良い百合です……たまりません……」

西園さんも見てるだけなのに興奮気味だ!

「む~クド公ばっかずるいっ! お姉ちゃん、わたしにもっ!」

対抗意識を燃やした葉留佳さんも二木さんをつついた。

「なによ、はるか?」

クドを開放した二木さん。

「お姉ちゃん、こっちも」

葉留佳さんは手を広げて受け入れの体勢だ。

「はるかぁ」

ぽふん、と葉留佳さんの腰に手を回し顔を胸に埋める形で抱きつく二木さん。

「はるか、はるか、はるかぁ♪ はるかのにおい……♪」

まるでご主人様と再開した子犬のように嬉しそうに葉留佳さんの胸に顔を押し付ける二木さん!

「これは……ヤバイですヨ……」

頬を赤らめた葉留佳さんが顔を上げた。

「お姉ちゃんが可愛すぎて、なんかなんか……お持ち帰りしたいっ!」

「いやいやいやいや、すごくアブナイこと言ってるからねそれっっっ!!」

「けどけどっ」

葉留佳さんが胸元の二木さんに目を戻すと、

「ねぇ、はるか、わたしのこともぎゅっとして…だめ?」

とろけるような表情で葉留佳さんに全てを委ねてしまっている感じだ!!

「ほら、これですヨっ!! いつもツンケンしてるお姉ちゃんがコレですヨこれ! これでぎゅっとしてみると……ほらほらっ、あの鉄仮面のお姉ちゃんがこんなイケナイ表情してくれるんですヨ!! こんなん見て何もしないなんて女が廃るってもんだーっ!」

「葉留佳さん目が本気だよねっ!? ダメだからねホントにっっっ!!」

「次は私なのですーっ! 早く変わってくださいっ!!」

「クドもなんでそんなに対抗意識燃やしてるのさーっ!」

この日は、葉留佳さんとクドの二木さん争奪戦が勃発したのだった……。

 

 

次の日。

「死んでやるっっ!!」と屋上のフェンスをよじ登る二木さんをリトルバスターズ総出で必死に止めに入ったのは言うまでもない……。

 

188.ゆりと天使、お風呂場で遭遇ス【Angel Beats!】

【SS】ゆりと天使、お風呂場で遭遇ス【Angel Beats!】

 

#シチュ:ゆりと天使がお風呂場で遭遇しちゃったようです。

 

「――ハァァ……大浴場の独り占めは最高よね~」

夜遅く、最終時間間際の大浴場。

週の中日であることを考えると一般生徒はこの時間はまず来ないだろう。

そんな予測が的中し、あたしはこの広い大浴場を独り占めしていた。

「平日の授業時間のお風呂も最高なんだけどね~」

広い湯船でくつろぎながら独り言を漏らす。

今日に限っては所要があってこの時間になってしまったのだ。

「――ハァァ……生き返るわぁ~」

……なんてお風呂の定型句も死後の世界だとジョークよね。

くだらないことを考えながらお風呂の心地よさを堪能していた。

そんなときだった。

 

――ガラガラ……

大浴場のドアが開けられる音がした。

 

(せっかくのお風呂独り占めだったのに誰よ…)

恨みがましく目をそちらに向けると……。

陶器のような白肌にバスタオルを巻いた小柄な女の子が静かに入ってきた。

(ゲ!? 天使!?)

なんでこんなときにっ!

普段はホルスターをつけている場所に手が伸びるが、湯を切っただけだ。

文字通り丸裸のあたしはそんなものを身につけてはいない。

瞬時に頭がフル回転するが。

(…………今までも天使から攻撃してくることはなかったし、やり過ごせば大丈夫ね…)

警戒しつつも天使を見る。

体にバスタオルを巻いた上に、手にはタオルまで持っている。

おすまし顔でご苦労なことね。

けど大浴場だっていうのにバスタオルで体を隠すなんて邪道と思うのはあたしだけ?

もしかして背中に羽が生えてるとか?

それとも天使ってくらいだし、人前で肌を見せてはいけないとか戒律でもあるのかしら?

あたしの目線に気づいたのか、天使がこちらを向いたときだった。

その踏み出した足が……。

 

――ツルッ!

「……!?」

あ、すべった。

 

天使はまるでオーバーヘッドキックをするような見事なフォームで中を舞い……

 

――ズベンっっ!

 

コケた。

盛大にコケた。

海外のコメディー映画も真っ青な見事なコケっぷりだ。

もちろん体を覆っていたバスタオルなんてはだけてしまって……その……色々とフルオープンだ。

(……天使も……普通なのね……)

あたし一人で良かったわ、と人事ながら安堵した。

こんなポーズを見られたら、あたしなら死にたい。

 

「…………っ」

天使が痛々しく起き上がった。

「…………」

ガン見していたあたしと目が合った。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「………!!!!!!」

プシューーーという擬音が聞こえるほどの勢いで天使の肌がピンク色に染まった。

肌が白い分だけ目立ちやすい。

いつもよりも素早い動作でバスタオルをワシッと掴むと体に巻きつける天使。

けどその体が完全に上気しているのが見て取れる。

 

ふぅん、天使も恥ずかしがるのね……。

 

天使はそのまま鏡の前へ向かい、髪を洗い始めた。

平静を装ってはいるけど手つきを見ていると、

(……ありゃ内心随分とパニクってるわね……)

同じところを何度も洗ったり、動きが止まったかと思うと肩をプルプルと震わせたりしている。

見てしまったこっちがむしろ悪いことをしたようにすら思ってしまう。

挙動不審で洗ったんだか洗ってないんだか解らない状態で髪を洗い終わった時だった。

「……?」

――キョロキョロ。

何かを探す天使。

「……? ……??」

せわしなくキョロキョロとしている。

 

はぁ……。世話が焼けるわね……。

 

「――はい、コレ」

居ても立ってもいられず、床に落ちていたタオルを洗い絞って天使に渡した。

「あなたが今探しているの、これでしょ」

あたしを見てキョトンとしていた天使だったが、

「…………ありがとう」

恥ずかしげに受け取ると、洗った髪をタオルでまとめようとする。

が。

「……っ? ……。……っ」

まださっきのことを気にしているのか上手くまとめられない。

「ああもう、あたしに貸しなさいっ」

自分の世話焼き気質に内心ため息を付きながらも、タオルターバンを作る。

「はい、できた。――あなたね」

「……?」

「コケたとか裸を見られただけでそんな恥ずかしがってどうするのよ」

そんな言葉がついて出た。

天使の様子に腹がたったのもあるし……話しかけたほうが多少は恥ずかしさも和らぐと思ったのだ。

「あたしを見なさい。この通り――」

ペチペチと自前の胸を叩く。

「素っ裸よ」

天使の前で裸で仁王立ちだ。

「お風呂はね、裸なんて見られて当然のところなの。わかる? 身も心も休める場所なのに、恥ずかしがってたり気を張ってたら逆に疲れちゃうじゃない」

「…………」

あたしを見て目をパチクリさせていた天使。

その目をあたしの上から下まで見渡すと、負けを受け入れたように嘆息した。

「……そうね」

そうつぶやくと、体を覆っていたバスタオルを一瞬戸惑いつつも……外した。

透き通るような白の蕾が現れた。

「……」

目を伏せた天使だったが、あたしに目を向けた。

おかしくない?と言わんばかりの不安げな様子だ。

正直、女のあたしでもドキリとするくらいキレイ…………。

って何を考えているんだあたしはっ!

「そ、それでいいわ。今回は特別にあたしが背中を洗ってあげるわ」

自分の内心に戸惑ってしまったせいか、そんな提案をつい出してしまった。

 

***

 

天使の小柄な背中。

その背中には天使の羽なんて無かった。

ごくごく普通の女の子の背中だった。

コシコシしながらオシリに目を向けた時だ。

(……青あざができてるじゃない……)

さっきころんだ時にオシリ、尾てい骨の部分を打ったようだ。青あざになっている。

「ねぇ」

「……なに?」

「ここなんだけど」

 

――ツンっ

 

「…っ!」

青あざを指でつくと、それに合わせ天使がピクンっと反応した。

「青あざになっちゃってるわ」

「……そう…ぁっ!」

話している最中に意地悪でもう一度押すと、天使があたしの指の動きに合わせピクンと反応する。

これ、イケナイ気持ちになってくるわね……。

「あとでシップとか貼っておきなさいね」

「……わかったから、そんなに押さないで」

拗ねたような口調だ。

へぇ。

今まで話しをしなかったけど、けっこう人間らしい所があるじゃない。

 

***

 

湯船に天使と二人で浸かる。

距離は近い。

敵同士なのに変な感じだ。

「…………」

……天使がまた何かやっている。

背中に手を回したいようだが……

「ん……っ。 ……?」

どうやら手が届かないようだ。

「何してんの?」

「………………背中が」

「うん?」

「……背中がかゆいの」

「はぁ?」

 

「……」←手を後ろに回してる

「…っ…」←頑張ってる

「……?」←悩んでる

「っ!っ!」←勢いをつけたけど届かない

 

……。

不器用というか天然というか、世話焼き気質を刺激する奴だった。

「はぁぁ……どの辺よ?」

「……この、先、辺り」

天使が頑張って回している手の先。そこに指を走らせる。

「この辺でいいかしら?」

「……ん……いいわ……」

手を止めた後、天使があたしの後ろに回りこんできた。

「?」

 

――サワサワ。かきかき。

 

「ひゃぅっ!?」

背中に走る感触に声をあげてしまった。

「……お返し」

「お返しいらないから!」

「……お礼参り?」

「それ意味変わってるから!!」

あたしをツッコミに回させるなんてどんだけボケボケなのよこの子は!

「ああもう、お礼したいわけね! 肩。肩を揉んでほしいわ」

コクリ。

 

天使の手があたしの肩をリズミカルに揉んでいく。

――もにもに……もにもに……もにもに……。

がんばっているのはわかる。

――もにもに……もにもに……。

わかる。

けど……。

 

「……どう? 気持ちいい?」

「弱いわ! す~~~んごく、弱いわ!」

揉んでるんだか触ってるんだか分からない程度の触れ方だった。

「……もっと強くがいいの?」

「ええ。これじゃちっとも満足できない」

「……そう。なら――」

ホワン、と天使が光った。

『パッシブスキル、オーバードライブ』

天使の手があたしの肩を掴んだ。

ホワンホワンホワンとオーラっぽいものが出ている。

……とてつもなく嫌な予感がするのは気のせいだろうか?

「……これくらい?」

 

――メキメキメキャメキョッ

 

「ひんぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!!」

素っ裸でのたうち回るあたし!!

肩っ、肩っ、肩が潰れるかと思ったっっっ!!

「……気持ちいい?」

「よ、よくこの様子を見て「気持ちいい?」なんて聞けるわね!?」

「……?」

なんで首を傾げるかわからないっ!!

「いったいあなた何したのよ!?」

「……簡単に説明すると……」

あれこれ考えるようにしたあと、

「……3倍界王拳?」

「ワケがわからないわ!?」

きっとこれ、肩叩きだったら死んでた自信がある。

 

――さすりさすりさすり

 

「……ごめんなさい」

悪いと思ったのか、あたしの肩を優しく撫でる天使。

「……どう?」

「多少はマシになったわ……」

…………。

……。

天使はあたしたちの敵。

そういう認識でずっと過ごしてきた。

けど、今心配そうにあたしを撫でている天使を見ると心が揺らいできてしまう。

天使という偶像的な存在というよりも、人間くさくて、面倒を見てあげないといけないように思えて……。

「――ねぇ、あなたって……」

 

――こてん。

 

話しかけようとした時、背中に温かな――天使の体が押し付けられた。

あたしの背中に小さな膨らみの感触、鼓動を感じる。

背中に感じる温かみは、大昔に自分がお姉ちゃんをやっていたときのことを思い出させる。

「……あなた、本当に天からの使いなの……?」

と、天使の方に向き直ると。

 

「~~~~~~~~~~~~ぁぅ」

目を回していた。

 

って!!

「のぼせてるじゃないっ!? ああもう、世話が焼けるわねっっ!!」

天然の天使に人間くささを感じつつも、その伸びた体を担いで大浴場から脱出するのであった……。

 

 

で、今回のオチ。

翌日の話だ。

「よーゆりっぺ。こんな時間に学校で会うなんてな。今日は早いじゃんかよ」

「ふあぁ…珍しいな」

「あら日向くんに音無くん、そっちこそ早いじゃない」

「いつもの朝練だよ。ゆりっぺはどうしたんだ?」

「色々あって眠れなかったのよ」

そのとき、クイクイと袖をひかれた。

振り向くと……。

「……」

天使が立っていた。

「ゲ、天使!?」

日向くんと音無くんが即時に臨戦態勢をとる。

そんなことを意に介さない天使はあたしを見つめていた。

「……昨日はありがとう」

うっすらと頬が朱に染まっている。

昨日のおかげか、天使の表情を読み取ることができるようになってきていた。

「……起きたらあなたの部屋で驚いたわ」

……のぼせて倒れた後、結局あたしの部屋で介抱したのだ。

「調子はどうかしら?」

「……オシリのあなたが指でつついた場所、まだ少し痛むわ……。あなたこそ私が揉んだところは大丈夫?」

「強く揉みすぎよ。まだ調子がおかしいわ」

「……そう。今度は気持ちいい揉み方を研究してくるから」

「そう願うわね」

「……授業があるから行くわ。あなたもたまには出席して」

「考えておくわ」

それだけ言い残すと天使は教室の方へ去っていた。

残されたのは……

 

「ゆ、ゆ、ゆ、ゆりっぺ…………っ!?」

「そこまでいっていたのか……っ!?」

なぜか驚愕の表情の日向くんと音無くんだった。

「なによ? そんな化物を見るような目で」

「ゆりっぺ、き、昨日寝れなかったって……」

「色々あって天使が部屋にいたのよ。聞いてたでしょ」

「聞いていた、確かに聞いていた……ゆり、おまえ、おまえ……ヒーッス……ヒーッス……」

音無くんの呼吸が何故か早く、まるで禁断の言葉を発するかのように興奮状態に合った。

「天使の……天使の……」

ギラリ、とその目が光った!!

 

「天使のオシリで遊んだのかぁぁぁぁーーーっ!!」

 

…………。

……。

 

「はぁあぁあぁあぁぁぁぁ~~~~っ!?」

「天使が物憂げな表情で「オシリのあなたが指でつついたの、すごいよかったわ」って言ったことを俺は聞いたぞッ! さっき! 確かにッ!!」

「なッ!? ちがっ……! はぁぁぁぁ!?」

「いきなり尻はハードル高すぎだろぉぉぉ! 百合に求めてんのはそこじゃねぇぇぇっ!」

意味不明なところで悶絶を始めた音無くん!!

「落ち着け音無……俺もさっき確かに聞いた」

ゆらりと日向くんが立ちはだかるっ!

「天使が「私が揉んだのどう?」って聞いた時「強く揉みすぎよ♪」とダメ出ししてたろ!!」

「そっ、それはっ!!」

「するとどうだ!! 天使も「気持ちいい揉み方研究してくる♪」だと! 乳繰り合うってレベルじゃねぇぞっ!! 羨ましいなオイっ!!」

「だからっ、昨日お風呂で天使がのぼせて……っ」

廊下で「百合にはそういうのを求めてねぇぇ!!」「羨ましすぎるぞクソォォ!!」とエビ反りする二人!!

「天使がのぼせたのを介抱しただけで……」

「百合はもっと崇高じゃないとダメだろぉぉぉーーーっ!!」

「羨ましいなオイッッッーーーー!!」

 

「テメェら聞けこのヤロォォォォォーーーーッ!!」