#シチュ:リトバスメンバーが共用スペースの大掃除をするようです。
――食堂にリトルバスターズのメンバー+佳奈多さん、笹瀬川さんが集まっている。
「もぐもぐ…こっくん。おいしいね、さーちゃん」
「ええ。こんなにお菓子を振舞ってくださるなんて、景気が良いですわね」
「うおっ!? 謙吾、それオレのカラムーチョじゃねぇかっ!」
「フン、名前でも書いてあったのか? 早いもの勝ちだ」
「ね、葉留佳。チロルのきなこ取って」
「はいよっ」
――僕たちの周りには盛大にお菓子が盛られている。
「恭介、こんなにいっぱいのお菓子どうしたの?」
「ああ、それなんだが……」
コホンとひとつ、恭介が咳払い。
「よし、おまえら食ったな」
「では、これより……」
「第一回・今だ掃除だアッパーだ! 冬のテンション崩壊大掃除祭り開催ー」
「はい拍手~」
「ブフーーーーッ!?」
真人が盛大に口のものを吹き出した!!
「ちょっと待てっ! なんでいきなりそうなるんだよっ!?」
「あれ? 言わなかったか?」
「んなこと一言も聞いてねぇぞっ!」
「なるほど、これはそういうことか…」
ポッキーをかじる来ヶ谷さん。
「恭介氏、説明してもらおうか」
「いやな…共用スペースが汚れていることをそれとなく寮長に指摘したんだ」
「すると是非に、と帰ってきたんだ」
「やらないわけにはいかんだろ」
それって…。
「絶対いいように利用されてますナ」
僕もそう思う…。
「いいじゃない、葉留佳。どうせ暇なんでしょう?」
「私もいいと思うよ~」
「やはり大掃除は日本の心だと思いますっ」
どうやら佳奈多さん、小毬さん、クドは乗り気のようだ。
「ああ、そうだ。おまえらはよくわかってるな」
「理由はよくわかった」
真人が腕を組みなおす。
「おっと、井ノ原星から電波を受信しちまったから、ちょいとばかり宇宙にひとっ飛びして来るわ」
「あたしもドルジに呼び出しされてたんだ。忘れてた。今すぐ行かなければ」
「やはは、私もパース」
「待て待て」
「おまえら、お菓子食ったよな?」
「食ったけど…それがなんだよ?」
「それ、寮長からの感謝の気持ちの差し入れな」
「「「なにーーーっ!!」」」
明らかに恭介の計画的犯行だよね、これって……。
――グループ分けが終わり、僕と笹瀬川さんはテレビのある娯楽室を掃除することとなった。
「こんなに広い場所をわたくしたち二人でやるんですの?」
「みんなもいろんなところをやらなきゃいけないし、仕方ないよ」
「ハァ…こんなことなら来なければ良かったですわ」
そう言う割には笹瀬川さんはネコのエプロンを装着し、やる気十分だ。
「フンフンフーン♪」
ぱたぱたぱた。
「るんるんる~ん♪」
ぱたぱた、ふきふきふき。
鼻歌を歌いながらテキパキと掃除をしている笹瀬川さん。
見ているこっちまで楽しくなってくる。
もしかして……笹瀬川さんってとっても家庭的なのかな?
「なんですの?」
見ていたのを気付かれてしまった。
「笹瀬川さんって掃除とか好きなの?」
「そうですわね…」
「家事全般は嫌いではありませんわ」
いつもからは想像もつかない。
……なんて言ったら怒られそうだ。
「上の窓も掃除したいから脚立を押さえていてくださる?」
「あ、うん」
カツカツと脚立を上る途中で笹瀬川さんが止まる。
「……」
「どうしたの?」
「上を見たらマジブッ殺ですわっ!」
「み、見ないからーっ」
「――よいしょっ、よいしょっと」
僕の頭上からは笹瀬川さんの窓を拭く音と声が聞えてくる。
「直枝さん、ガラスマイペット」
「はい」
上を見ないように手渡すのも大変だ…。
「隣の窓も……」
脚立から無理な体勢で隣の窓に手を伸ばしたとき。
「――きゃっ…!?」
グララッ!!
笹瀬川さんがバランスを崩した!
「危ないっ!!」
慌てて体を支えようと手を伸ばす!
その手は布をこすりすり抜ける!
ガタァァンッ………………――――――――
脚立が床に叩きつけられた。
…………。
……。
一瞬の空白から即座に意識が戻る。
あ…っと。
笹瀬川さんはっ!?
…………。
両頬に伝わる温かい感触。
僕の頭にしっかりと回されている手。
肩にズシリと重さがかかる。
「……」
「……」
笹瀬川さんは見事に脚立から僕の肩へと移動していた!
「……助かりましたの……?」
頭の真上から声。
まさかこれって……。
今、僕は笹瀬川さんを肩車してるっ!?!?
――ぎゅぎゅぎゅ~~~っ!
う、うわわっ!?
しかも落ちまいと僕にがっちりしがみついてるから…
笹瀬川さんのふとももで僕の顔がしっかりとカニ挟みされているっ!
め…めちゃくちゃ苦しいっ!
「わたくし……えっと……あら、直枝さん?」
どうやら笹瀬川さんも落ち着いてきたみたいだけど…。
「………………………………………………………………へ?」
「はっ? なっええっ!?」
「エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエーーーッ!?!?」
「な、ななななななななななんですのーっ!?!?」
「う、うわっ、上でジタバタしないでよーっ!!」
「下ろして下ろしなさいっおろ、おろ…下ろせーーっ!!」
笹瀬川さんが僕の頭をポカポカ叩きながら、さらに足で僕の顔を締め付けてくるっ!
――ムギュ、ムギュギュギュギュ~!
「ひゃっ、ち、ち、窒息、窒息しちゃうーっ」
「コ、コラ! 顔動かさ――きゃっ!?」
「うわわっ!?」
――どっす~んっ
「……あいたたたた……」
「ひ、酷い目に遭いましたわ…」
僕が下になり重なり合うように床に倒れこんだ。
「…………あぁっ、もう!!」
「ちょっと直枝さん」
笹瀬川さんが上体を起こす。
仰向けに倒れこんでいる僕にまたがるようなポーズとなってしまっている。
が、本人はまだ混乱中なのか気にしてない様子。
「あつつ…笹瀬川さん、怪我なかった?」
「それは大丈夫……じゃなくてっ!!」
――グイッ!
胸倉をつかまれて上体を起こされた!
「あんなことをして、わたくしをナメてるんですのっ!?」
よっぽど恥かしかったのか、笹瀬川さんの顔は耳まで真っ赤だ!
「いやいやいや、あれは不可抗力でっ」
「言い訳は聞きたくありませんわっ!」
「よくも乙女の純情を踏みにじってくれましたわねっ!!」
そのとき。
「……すごい音がしましたが大丈――――ハッ!?」
「何よ、掃除も静かに……………………――――――――」
西園さんと佳奈多さんが驚愕の表情でこちらを見ていた!!
「今のは笹瀬川さんが……」
そこまで言って、二人が口をパクパクさせながら僕と笹瀬川さんを見比べていることに気付いた。
自分たちの様子をよく確かめてみる。
僕は足を伸ばした格好で座っていて、その上に笹瀬川さんが向かい合ってまたがってる。
そして、笹瀬川さんが僕の胸倉を掴んで僕の顔を引き寄せる様子は、乱暴にキスを迫っているように見えなくもない。
……。
って!!
「ちちちちちちちちちちちちち、違うんだこれはっ!!」
「違うって何が?」
冷たい佳奈多さんの視線が胸に突き刺さる!
「ご、誤解ですわっ!! これは直枝さんが――」
「乙女の純情……ぽっ」
「そういう意味じゃないですわぁぁぁーーーっ!!」
「最低……最低」
「か、佳奈多さんっ! だからこれはっ」
「…べ、別に気になんかしてないから。いいじゃない。おめでとう……っ……ぐすっ」
「えええっ、佳奈多さん!?」
「幸せになればいいじゃない……っ」
――スタタタタタタタタターッ!
「ちょ、ちょっと佳奈多さんーっ!?」
「ご、誤解ですわーっ!!」