#いつも負けている鈴は…。
「うみゅ…」
今日もメンバー集めに行ってざじずぜざざこに負けてしまった…。
理樹の部屋のドアを開けると、理樹たちの目があたしに向けられた。
「うわ…今日もこっぴどく負けたね」
「鈴、靴下の片方はどうしたんだ?」
「ざざみに戦利品だってとられてしまった…」
片足だけぺたぺたしてヤな感じだ…。
「マジか…また新しいの買わないといけないじゃないか」
「文句ならざざみに言えっ!」
「おめぇが弱っちいからんなことになんだよ」
「なにぃ…」
「…うみゅ、今日はおまえの相手する気にもなれん」
お気に入りの隅っこに行って腰を下ろした。
「うおっ!? いつもなら蹴ってくる鈴がこねぇぞっ!?」
「ふむ、これは重症かもしれんな」
剣道馬鹿にまで心配されてしまった。
「ねぇ恭介、なにかいい方法ないかな?」
「そうだな…」
腕を組んでなにか考えているきょーすけ。
「――鈴、笹瀬川に勝ちたいか?」
「あたりまえだっ!」
「OK」
フッ、といつもみたいにきょーすけが笑った。
「あの方法を使うとするか」
「――きょーすけ」
あたしと理樹ときょーすけと馬鹿二人はテレビの前に座っている。
「きょーすけ」
「ん? どうした、鈴?」
「あたしはざざみに勝ちたい」
「ああ、わかってる」
「テレビでボクシングを見るだけで勝てるのか?」
「勝てる」
きょーすけが自信満々に頷いた。
そうだったのか…。
あたしに足りなかったのはボクシングを見ることだったのか。
目からうろこだっ。
――テレビでボクシングを見ていると。
ふみゅ?
戦ってる奴らが抱き合って試合がストップしたぞ?
「こいつら何してるんだ?」
「何ってそりゃおめぇ『さばおり』に決まってるだろ」
「さば缶?」
筋肉馬鹿が呆れたような顔をあたしに向けている。
「ちげぇよ、世界最強の国技SUMOUの技だぜ」
「あまりにも最強な技だから、ほれ、レフリーが止めに入ってるじゃねぇか」
「なにぃ…」
うわっ、ホントだっ!
馬鹿が言うとおりレフリーの人が止めてるぞっ!
「真人、うそ教えちゃダメだよ」
そうだったのか…そんな技があるなんて知らなかった…。
「へ? うそなんて教えてねぇぞ、オレ」
「理樹、無駄だ。こいつは本当にそうだと思っているようだ…」
キュピーンと閃いた!
わかったぞっ!
「この技があれば勝てるぞっ」
勢いよく立ち上がった!
「いやいやいや、鈴、真人の話は――」
「きょーすけはこの技をあたしに伝えたかったんだな」
「ご明察」
「って、恭介まで何を言ってるのさっ!?」
「ちょっとざざみをやっつけてくるっ」
「ちょっと鈴ーっ」
理樹がなんか女々しいことを言ってたけど、あたしは聞かずに部屋を飛び出した。
――女子寮の廊下。
そこでようやくざざみを見つけた。
「ざじずぜざざみーっ! あたしと勝負だっ」
「あ~ら、棗鈴。またわたくしにやられにきましたの?」
「今日のあたしは昨日までのあたしと一味ちがうぞ」
「ふん、一味違おうが二味違おうがわたくしの相手にはなりませんわ」
「そのセリフはやってみてから言ってもらおう……」
「なら、わからせてやるまでですわっ!」
いつものようにざざみがすごい勢いで飛び込んできた!
佐々美の腕が振り上げられて体に隙が出来たっ!
ここだっ!
「しねーっ!!」
あたしは思い切り踏み込んで、佐々美の懐に飛び込んだ!
「自分から近づ――!?」
――きゅっ!
しっかりと佐々美に抱きついた!
「なっ……!?!?」
「これでもくらえーっ」
――きゅっ、きゅっ。
腕に力を入れて、佐々美の柔らかい体をしめつけてやった!
「ひゃぅっ!?」
「しねーっ」
――きゅっ、きゅぃっ、ぎゅぅ~~~~~。
「ひゃぅ、やっ、な、な、な、な…………っ」
「どうだっ、降参かっ?」
ざざみの顔がどんどん赤くなってきたっ。
「は……っ」
「離しなさいっ! このっ、放しなさいーっ!」
「ダメだっ」
「むきーっ!! 放しなさい、放して、放せぇーっ」
さすが最強の技だなっ!
めちゃくちゃ効いてるみたいだっ!
しかも佐々美がふわふわしててくちゃくちゃ気持ちいいぞ。
「わかった、わかったから、降参しますから放しなさいっ!」
「仕方ない、そこまで言うなら放してやろう」
――ぱっ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
真っ赤になっている佐々美が息をあげている。
肩なんてプルプル震えてて、見てるだけで可哀想だな。
「ま、まさか初めての抱擁が女性、しかも棗鈴だなんて…」
ん?
なんか自分の体を抱いてブツブツ呟いてるぞ?
「な、な、棗鈴っ!! おぼえてらっしゃいっ!!」
佐々美は半分泣きながら走り去った。
あの佐々美をこんなに容易く負かすなんて、この技すごいな!
うみゅ。
これからは佐々美に会うたびにこの技を使えばいいな。
以上w
次から佐々美に会うたびに鈴は佐々美に抱きつきますwww
そして佐々美が徐々に目覚めると!!!!(ぅぉぃ