#シチュ:恭介がグラウンドに来ないので、理樹が恭介の教室まで迎えにいったようです。
「恭介ー、いる?」
――夕日に赤く染まる教室。
「あ…」
「……スゥ……スゥ……」
恭介は机に突っ伏して気持ち良さそうに寝ていた。
傍らにはマンガ本。
きっとマンガ本を読んでいる間に寝ちゃったんだ。
まるで子どもみたい。
ついつい笑みもこぼれてしまう。
「恭介、もう夕方だよ」
僕は恭介を起こそうと、恭介の机に近づいた。
「恭介」
「恭介ってば」
顔を近づけて恭介を覗き込む。
「…スゥ…スゥ…」
「……」
そういえば…こんなに近くで恭介の顔を見たのは、いつ以来だろう?
少なくとも大きくなってからはないと思う。
整った顔立ち。
長めのまつ毛。
サラサラな髪。
それに、無邪気に寝ている恭介の顔は…
――どきどき…。
「………………」
って!!
僕は何をドキドキしてるのさっ!
お、落ち着け…僕。
気分を落ち着けよう。うん。なにかの間違いだよね。うん。
もう一度恭介の気持ち良さそうな寝顔に目を向ける。
…………。
わ、かわいい。
って、僕は何を考えているんだーーーっ!!
だ、だ、だ、第一、恭介は男で、僕も男なんだっ。
だから…だから、そんな、ときめくだなんて……。
…………。
……。
『ときめく』って何さぁーーーっ!
なんでそんな単語が頭に浮かぶのさっっっ!
「スゥ……スゥ……」
大体、僕と恭介は幼なじみだし!
「スゥ……スゥ……」
兄弟みたいなものだし――。
「スゥ……スゥ……」
男同士で――……。
…………。
……。
ゴクリ。
見れば見るほど、恭介の寝顔に吸い寄せられる僕がいた!
……。
キョロキョロ。
誰も…いないよね?
……ぼ、僕達男同士だし……
その……。
……。
ちょっとくらい、恭介の顔を触っても…問題ないよ…ね?
そろそろ…。
ゆっくりと、恐る恐る恭介のほっぺたに手を伸ばす。
ドキドキ…ドキドキ…。
「きょ、恭介…」
……あと5センチ。
……あと3センチ。
……あと…あと……。
「……ん、ふわぁぁ~~~っ」
触る直前、突然恭介が目を覚ました!!
「どぅるうわうおうわぁあぁああぁあぁあぁぁーーーっ!?!?」
「うおっ!? 理樹、突然どうしたっ!?」
「エッ!? なななななななななんでもない、なんでもないよ、ぜんぜんなんともないからぁっ!!」
「いや…なんでそんなに必死なんだ…?」