#シチュ:理樹が杉並さんを気にして見ているようです。
――休み時間。
僕は何気なく杉並さんの方へ目を向けた。
杉並さんの前に座っている勝沢さんが後ろを向き、高宮さんが杉並さんの机に寄ってきた。
一見仲が悪そうに見えて、結構仲がいいんだよね、あの三人。
「睦美ってさ」
「どうしたの、高宮さん?」
「あんた見てるとさ」
「うん?」
小首をかしげる杉並さん。
「この、ほやっとした顔見てよ、勝沢」
「あー…なんか高宮が言いたいことわかったかも」
「はい? ん? どうしたの?」
顔を覗き込む二人に、杉並さんの頭には『?』がいっぱい並んでいるようだ。
「無性に……いぢめたくなるっ!」
杉並さんのホッペに高宮さんの人差し指がぷすり。
「私もね」
さらに勝沢さんの指も。
「え、えぇっ」
「せーのっ」
「「このこのこの~~~」」
ぷにぷにぷにぷにに~
「ひ、ひやぁ~、や、やめて~」
「やめなーい」
ぷにぷにぷにんぷにぷに~~~。
両サイドからホッペをプニプニされているっ!
「やめて、やめてやめて~」
ぷにぷにぷにんぷにぷに~~~。
杉並さんの顔は
>△<
こんな感じ。
結局5分間くらい、教室には杉並さんたちの「うりうりうり~」「やめてやめて~」という声が響いていた。
――授業中。
杉並さんに目を向けると。
こっくり、こっくり……。
首が舟をこいでいた。
勝沢さんや高宮さんは机に伏せて寝ているのに、シャーペンを持って勉強を頑張ろうとしている努力をしている様子がいかにも杉並さんらしい。
完全に寝てるけど。
ビクッ!
(ひゃわっ)
あ。
ビクッとして飛び起きた。
しかも小さい声付きで。
キョロキョロキョロキョロと小鳥みたいにせわしなく周りを見回してる…。
うわ……恥かしかったのか耳まで真っ赤。
誰もそんなに気にしてないと思うけどなあ。
――また休み時間。
「私たちトイレ行って来るな」
「あ、うん、いってらっしゃい」
杉並さんが小さく手を振って二人を見送る。
「……」
二人を見送った後。
ゴソゴソ…。
鞄をなにやらゴソゴソしている杉並さん。
あ、チョコボールだ。
それをポンポンと手に取り、ぱくり。
「……♪」
すごい、うれしそう。
それを鞄に戻そうとして…。
「……」
とまった。
「……」
何かを考えているようだ。
「……」
「……」
ぽんぽん。
ぱくっ。
「…♪」
そしてキョロキョロと辺りを見回し、いそいそと鞄にチョコボールをしまった。
杉並さん、すごくリスっぽいよ…。