「――ゆったりと浸かれそうだな」
「どれ」
バスタオルを外し、足からそっと湯船につける。
「適温だな」
独り言を言いながら体を湯にゆっくりと沈めた。
「ふぅ……」
頭上に広がる満天の星空を仰ぐ。
「こういうのも……」
目を閉じ大きく深呼吸。
「――たまには悪くない…」
今日はいつものリトルバスターズメンバーで旅行に来たはいいが、先程は小毬君や葉留佳君に構っていたせいでのんびりと浸かれなかったからな。
そんな理由でみんなが寝静まった後で、再度露天風呂へとやってきたのだ。
――ちゃぷ、ちゃぷ。
「む?」
どうやら先客がいたらしい。
さっき入らなかった西園女史あたりか?
――ちゃぷちゃぷ。
湯煙でよく見えんが、人影が近づいてくる。
線が細くショートヘア。
「西園女史か?」
「ううん」
人懐っこい笑顔が湯煙の間から現れた。
「僕だよ」
「なんだ、理樹君か…………………………――――――」
「うん、眠れなくて。来ヶ谷さんも眠れな………………――――――」
「「え??」」
その瞬間。
まるで液体窒素に浸かったかのように全てが凍りついた!!
…………。
…………。
カァァァァーーーッ!
か、か、顔がどんどん熱くなるっ!
「「うはぅえええええええええええええええええええええぇぇぇぇっ!?!?」」
理樹君は大きな瞳を点にし、顔が真っ赤で固まってしまっている!
わ、私とて何が何だか状況の整理が追いつかない!
「しまっ…あっ!? うわ、うわわわっ!?」
慌てて体をすぼめ胸をぎゅっっと両手で覆う!
な、ななななななな、ななな、ななななんで理樹君がここにいるのだっ!?
ままままま、まずは落ち着け私! 平常心だ私!!
パニック状態の頭を無理矢理回転させる!
い、いいい、今すべきことは何だ、考えろ!
そ、そうだ! バ、バスタオル!
バスタオルを置いた場所に目をやるが。
マズい!!
バスタオルは湯船から上がらないと取れない位置にあるっ!!
ど、どうすればいいんだっ!?
考えがまとまらないまま必死で胸を両腕でしっかりと隠す!
理樹君を見ると
「え…な、ななななな…いや……ななななななっ!?!?!?!?!?」
体全身を真っ赤にし、私を凝視したまま完全に硬直しているっ!!
わ、私だってタコもびっくりするほど体が真っ赤になっているに違いないっ!
おねがいだから早くそっちを向いてくれっ!!
「そっ…そっ…そそっ」
うあああっ!!
あまりの恥かしさに言葉が出てこないっ!
全身が熱を帯びて頭が余計に茹で上がる!
ま、まさか、ぜ、全部…み…み…見られたっ!?
脚を出来る限り引き寄せ限界まで体をすぼめる!
理樹君に裸を見られたっ!?
そっ、そしたら私はどうすればいいんだっ!?
よりにもよって一番大好きな人に、い、い、いきなり裸を見られるなんてっ!
はっ…はっ…恥かしくて…恥かしくて死んでしまうっ!!
この辺で終了w
この露天風呂は時間によって男女を分けている露天風呂という設定にしておきましょうかw
もちろん来ヶ谷さんが男性時間に間違って入ってしまったのです(爆