昼休み。
「ほらよ」
「真人はカツサンド2個か、やるじゃないか」
「へへっ、こいつでえーと…」
「30点だな」
30点か…これは高得点だ。
「真人には及ばぬが」
「そら、こいつを買ってきたぞ」
「謙吾は新入荷のカニパンだね」
カニパン2個で計24点だ。
「あたしだって負けてない」
得意満面の鈴の前には、人気どころの焼きそばパンとソーセージロールが並んでいる。
「お、スゲーじゃねぇか! …ええーっと10点だな」
「違うわボケっ! 20点だっ」
「理樹は?」
「僕はクロワッサンとメロンパンしか買えなかったよ」
「菓子パンでも人気どころだからな、メロンパンは」
「よって計18点」
「さて俺だが…」
恭介が目の前にパンを並べる。
「ほう、さすがは恭介と言ったところか」
クールな笑みを浮かべた恭介が並べたのは。明太フランスパン、チーズフォンデュパン、ご丁寧にデザートとしてみんな分のミニチョコクロワッサンまである。
「60点かよ、おめぇには勝てる気がしねぇぜ…」
「うん、やっぱり恭介はすごいや」
「そんなに褒めるなって」
「で……」
みんなの目が、一人に向く。
「………………ぅ」
沙耶さんはさっきからずーっと無言だ。
「沙耶は?」
「これよ」
観念したかのようにテーブルの前に2個パンを置く。
「ゲッ!?」
「む、むぅ…っ」
「あちゃぁ……」
「うわっ、くさっ!」
「まさか…そいつをゲットしてきちまうとはな…」
沙耶さんが買ってきたパンは……チーズあんしめサババーガーだ…。
パンにこってり甘い餡子ととろとろチーズ、しっかり漬けられたしめ鯖が汁ダクで挟んである。
3日前に入荷してから既に保健室送りを82人出しているという伝説の失敗パンとして恐れられている。
ちなみに点数配分は一個当たりマイナス20点だ。
二個だからマイナス40点。トップの恭介と100点差だ……。
「あーそうよっ、パンを買おうとしたらつまずいて、その拍子に手を突いたらそこにそのパンがあったのよ潰しちゃったのよ責任買取よっ! 惨めでしょ、哀れでしょ、ほら笑えばいいじゃないっ、あーはっはっはっは!って、笑いなさいよっ!」
「あーっはっはっはっ!」
また出た! 謎の自虐パフォーマンス。
「おめぇ、いっつもそればっかだな…」
「それと臭うから手洗ってこいよ」
「せめて笑い飛ばしてほしかったわ……」
「ごめん、可哀想すぎて笑えない…」
「鈴の言うとおり、惨め過ぎて笑えん…」
「あ、沙耶さん…破れた袋からしめ鯖の汁が垂れてるから、ポケットの中も洗ったほういいかも…」
「え、うそっ!? あ、ああーーーっ!? うわっクサッ!!」
うわぁ…惨めだ、惨め過ぎるっ!
ノソノソと立ち上がる沙耶さんからはブラックなオーラしか出ていない!
「ああ、それと沙耶」
「今度はなによ…」
「おまえビリだから罰ゲームな」
絶対恭介はドSだと思う。
***
「って、なんであたしはこんなカッコさせられてるんだぁぁぁーーーっ!!」
ブルマ姿で叫ぶ沙耶さん。
「まあバツゲームってことでもあるが、そもそも制服汚れちまったんだから仕方ないだろ」
「だからって何、このチョイスは!?」
「えーっとブルマ…かな」
「そんなこと訊いてるんじゃなくて!!」
「けど、沙耶にブルマ似合ってるぞ」
「え、そう?」
「あーうん、沙耶さんってスタイルいいからそういう格好似合ってるよ」
「まあね、伊達に訓練で鍛えた肉体じゃないわ」
何やら脚を前に出しアピールポーズ。
「このバンビちゃんのようなスラリとした脚は、そう、ブルマを履くために……」
「って、んなわけあるかぁぁぁーーーっ!!」
「見事な一人ボケツッコミだね、沙耶さん……」
「そろそろピン芸人の道に進めそうじゃね?」
「同感だ」
「うがぁぁぁぁーーーっ!! 誰のせいでこんなこと言ったと思ってんのよっっ!!」
「いや、自分だろ」
「しまったぁぁぁぁーーーーっ!」
「うわわっ、女の子がそんなのた打ち回ったらダメだからっ!」
「沙耶」
「あううう…ぐぐぐぅ…なっ、なによ、鈴」
「沙耶は、見てて飽きない」
「うんがーーーーっ!!」